登場からしばらく経った新型スイフトに乗っていく。
かなりスポーティーになったという評判の走りやドイツ車っぽくも見える内装の実物を確かめていくぞ。
冒頭のまとめ
軽い車体とハンドリングで元気よくスイスイと走っていく、欧州向けアルトのようなコスパの良いコンパクトカー。

1.2リッターしかない自然吸気だから全く期待していなかったが、パワー不足を感じることは一切なかった。
高速走行も問題なくこなせる加速力を持ち、巡行時の燃費性能もやけに良い。
130km/hくらいにクルコンをセットしてもリッター16kmくらいは出るし、適当に市街地を走ればリッター20kmを越える燃費が出る。
乗り心地は瞬間的に地面に引っ張る力こそあるものの良好であまりバインバインと動かさない。
ハンドルを切ってから車が動いていくまでにはあまりラグが無いが、ステアリングレシオやロール特性の味付けゆえスポーツ車のようなハンドリングの楽しみは無い。
200万円で買えるクルマとしては良くできているが、イマドキの軽自動車と比べると不利な点はそこそこある。
しかし軽くシンプルに作るおかげで、値段のわりに走行性能やクルマの総合点が高く、燃費も良い。
ゴテゴテと色々なものを付けがちな昨今の自動車業界に「これが経済的なクルマの答えだ」と事実を突きつけるような痛快さが気持ちいい一台だ。
YouTubeで調べると出て来る「車を褒めることしかしない系YouTuber」は、見る分には良いがあまり信用できないなと思ってしまった。
外観・デザイン

エンジンルームはスッカスカで余裕たっぷり。
ターボ(=スイスポバージョン)のことも考えて作っている印象。

エンジン、トランスミッション、フロントタイヤの連携は完全にFF。
パッケージング効率は良いが、重量バランスはあまり考えていない印象。
元のエンジンが大きくないため補器類などもローコストで済んでいる印象、経済的なクルマづくりである。

その割にはバルクヘッド部に遮音材が貼られている。
随所の遮音材からは、このスイフトがただ安いだけのコストカットカーではないことが見て取れる。

ちなみにヘッドライトの照射範囲は狭く、街灯の無い深夜の山道を一人で走るにはハイビームがあっても暗いと感じる。
内装
この世代からドアを開けた際の感触にガッチリ感が伴うようになった。

プラットフォームは先代と同じハーキテクトだが、各部の強化によって別物レベルのボディを手に入れているのは嬉しいポイントだ。
「安かろう悪かろう」感が否めなかった先代から、一気に現代水準のボディとなっているぞ。


さて内装はネットで見た限りは好意的な意見が多かったが、価格ゆえ素材感が安っぽい。

確かに使い勝手やデザイン性は良い。
200万円という低価格ながら、実用性全振りではなく欧州車のような凝ったテイストを感じる。
実物の質感をどこまで許容できるかが分かれ目となりそうである。

アームレストの奥側にサイドブレーキがある形となるため手がぶつかる。
クルコン・レーンキープ
200万円という価格を踏まえるとかなり高水準なクルコンを持つ。
車間追従式であることに加え、ほとんどハンドル操作が要らないレベルのレーンキープ。

80km/h制限の高速道路のほどほどのカーブくらいなら、ハンドルから手を放していても自発的に曲がって行ってくれるので感動ものだ。
車線が消えかかったタイミングや大雨などの悪条件では頼りたくないが、条件のいいところでは進んで任せたい。
静粛性とオーディオ
価格の割には静粛性はそこそこ良い。
フロアからのロードノイズも風切り音も比較体抑えられている。
しかしAピラーの角度が立ち気味なのか、空力的にもロードノイズ的にもボトルネックになっている印象を受ける。
オーディオについては中間グレードは以上は6スピーカーなのだが、肝心のスピーカーがショボい。
「こんなに質の悪い音、久しぶりに聞いたなぁ」と思った。
ただ聞くだけなら何とかなるが、音量をそこまで上げていなくてもこもった音が出てしまう。
イコライザーとかそういう次元の問題ではない。
10~15年くらい前の150万円くらいの価格帯の軽自動車のスピーカーだ。
「倉庫を漁ったら在庫が残ってたからこのスイフトに付けたの?」というレベル。
幸いにも遮音性の方は並みなので、スピーカーだけまともなものに交換すれば問題は解決するだろう。
ちなみに最廉価グレードはフロントのドアの2スピーカーのみとなる。
オプションで付けられそうだが想像もしたくない。
風切り音やフロアからのノイズ自体はそこまで悪くないので、スピーカー交換だけで世界が変わりそうだ
車中泊できる?
一人だけなら、一泊か数時間程度なら、工夫と装備次第で何とかなりそうだ。
一列目と二列目の隙間に足をタテに重ねて突っ込むようにすれば、一応の空間が確保できる。
しかし頭に向かって下がっていくような姿勢となる。
この角度の改善は必須。胃酸が逆流する角度で快適に寝られるわけはない。

二列目を倒すとトランクの部分だけ凹むようになるので、なんとかフラット以上に持って行く必要がある。
普通に運転席シートを倒せばいいだろう。
ちなみに運転席で寝ると知らぬ間にアクセルを踏んでしまいがちなので、エンジンを掛けた状態で本気で休むなら助手席に行った方が良い。
二列目の居住性
全長の割には二列目の乗降性は悪くないが、背もたれの角度が立っていて圧迫感があり、スペースとしても正直狭い。
あまり人を乗せたいような二列目ではない。
実走行インプレッション
取り回し
元の車体サイズが小さく小回りも効くため運転性に気になるところはない。
適当な角度から駐車を始めても、なぜか一発で理想的な位置に収まってしまう。
スイスポスポーツで致命的だった変な位置にあるドアハンドルによる左後ろの死角は大幅改善され、ストレスない視界性能を獲得している。
視界や使い勝手を大きく損ねるデザイン性って要らないんじゃないの・・・?
パワートレイン
1.2Lの直3エンジンは82馬力しか持たない。
いくら車重が940kg程度しかないとはいえ、これではさすがに無理があるだろと思っていたが、実物は軽快感すら感じるほどだった。

スペックにおける最大トルク108Nmの発生は4500回転だが、実際の運転フィールはトルク型エンジン。
インフォディスプレイ内のパワーモニターによれば、アクセルを半分も踏めば最大トルクが出てくれる。
低開度ではじわーっと伸びていくが、ある程度踏み込むとキックダウン気味に高回転域を開放する。
その際のエンジン音は完全にダイハツで聞き慣れた例の直3の音。
軽いからか、Aピラーの角度以外の空力特性が良いからか、140km/hより上も馬力のわりにスイスイと伸びて行ってくれてストレスがない。
高速域ではエンジン回転数が4000回転オーバーをキープするような状態になるが、風切り音に紛れるので巡航時は全くうるさくない。
⚙️ 技術的に見た比較:スズキ Z12E vs ダイハツ WA-VE
項目 スズキ Z12E(スイフト) ダイハツ WA-VE(ロッキー、ソニカ等) 排気量 1.197cc 1.198cc 気筒数・形式 直列3気筒 DOHC 12V 直列3気筒 DOHC 12V 吸気方式 NA(自然吸気) NA(自然吸気)※ターボ版もあり 可変バルブ 吸気側VVT 吸排気両側DVVT(車種による) 圧縮比 約13.0:1 約12.8:1 燃焼方式 ミラーサイクル寄り(遅閉じ制御) アトキンソン寄り(遅閉じ+EGR) 開発 スズキ完全自社開発(浜松) ダイハツ自社開発(池田) サプライヤー デンソー系/スズキ系鋳造 ダイハツ・トヨタ系鋳造 結果としての音質 「軽やかでメカニカルな」 「乾いたトリプルビート系」 両者とも排気量・気筒構成・吸気方式がほぼ同じため、
燃焼リズム(1-2-3拍の間隔)と点火順序が似ており、
さらに最近の3気筒エンジンでは共通して:
- 軽量クランク設計(慣性モーメント低減)
- 高圧縮比+低負荷燃焼制御(燃焼音が“硬い”)
- 排気集合の取り回しが近い(3-1レイアウト)
という要素を持つため、音の「キャラクター」が似て聞こえるのです。
🔊 サウンドが似ている理由をもう少し分解すると…
原因 内容 ① 3気筒特有のバランス 3気筒は1次バランス良好・2次振動あり。アイドリングで「ポロポロ音」が出やすい。 ② クランクピン間隔 両者とも120°位相の均等爆発。排気音のテンポが非常に似る。 ③ 軽量ピストン・クランク 慣性が軽く、燃焼圧力の立ち上がり音が強調されやすい。 ④ ECUの点火・燃料制御 どちらもEGR多用+リーン気味燃焼 → “カラカラ”した音。 ⑤ 吸排気マニホールドの設計 ショート集合タイプで共鳴域が近く、特に2000〜3000rpmで共鳴。 つまり、音の類似性は排気リズムと燃焼方式の共通性による「偶然の一致」です。
トヨタ=ダイハツ連合と、スズキは電動化・部品供給では協業していますが、エンジン開発は独立路線を維持しています。
これに加えて素晴らしいのがシフトノブに付属するSボタン。
これを押すとアクセルに足を軽く乗せるだけでスイスイグイグイと車が加速してくれるようになる。
回転数は常時4000オーバーのような状態になるが、気持ちよくストレスなく走っていける。
スピードの乗りは良いのだが、問題なのはブレーキ。
かなり奥の方まで踏まないと制動力が立ち上がって来ないため、慣れるまではむちゃくちゃ怖い。
体感的には30%くらいは遊んでいる印象。
軽さゆえフロントタイヤ負荷もそこまで大きくないが、ブレーキパッドくらいは交換してもいいかもしれない。
乗り心地
しっかり感を優先したあまりドタドタと動かさない乗り心地。
ボディの頑丈さを感じさせつつ程よいストロークでコトンコトンと動いてくれるため乗り心地はいい。
ちょっとした段差位ならタイヤホイールをコトンと動かすだけで素通りしてくれる。
ホイールサイズが大きすぎないのも良いところ。

飛び上がるような状況でも好き勝手跳ねさせるのではなく抑え込んでくれるが、その飛び跳ねを抑え込もうとする動きが強いのか、段差がないような路面の体感できないほど小さいうねりで唐突に下側へ引っ張られるような力を感じがち。
一昔前の低価格スポーツカーの、減衰マックス締めの足回りに乗っているような気分だった。
ピストンスピードが遅い領域での減衰力特性が強すぎるのだろうか…
おそらくハンドリングの軽快感を優先してショックアブソーバーをセットしたことによる弊害だろう。
後述するステアリングレシオの遅れと合わせると、乗り心地・走り心地はこの世代のスイフトより先代のスイスポのほうが良い。
スイスポは乗り心地や加速・旋回特性が車両性能のわりにガチガチではないため、フォルクスワーゲンの大衆車感覚で乗れてしまうところがある。
ハンドリング・運転の楽しさ
回し始めがクイックですぐにフロントが向きを変えていく。
軽くハンドルを動かすような領域ではスポーツセダンに乗っているような回し心地。

高速域でハンドルを少し大きく動かすと、一気に車体を持って行かれてしまう感じがある。
動かした瞬間のクイックさを優先しすぎて、高速巡航中はあんまりドッシリユッタリとは構えられない。
旋回時のロール自体はあまりないのだが、ステアリングレシオが遅れ気味でコーナリング中盤以降のテンポが悪い。
特に奥に行くにつれて急になっていく山道のカーブや、瞬間的にクイっと30度折れ曲がるようなカーブにおいて、このハンドルのダルさによる旋回の遅れが気になる。
乗り物のコーナリング限界的には問題が無くても、舵角不足で曲がって行かない感が出ている。
肝心のコーナリングだが、先代よりロール角が抑えられているとは聞いたが普通に傾いていく。
傾きが大きいため、自分の荷重コントロールで揺れを抑えてシャキシャキさせてということはできない。
またハンドルの回し始めで感じていたクイックさも、この傾きの大きさとハンドルの遅れを前にダルい印象へと変わる。
半ば「道に沿ってハンドル切ってるだけ感」のある走り心地となってしまっており、そこに運転が楽しめるクルマと呼べるような要素は個人的には感じられなかった。
FRのスポーツセダンほど曲がって行ってれるわけではなく、シビックのようなクルマの重さを感じながら制御していける系の乗り味でもない。
思い切り旋回方向に負荷を掛けると、だい~ぶ経ってからようやく乗り物が急旋回姿勢になる。
グイっとイン側に元気よく入っていき、一呼吸置いてから後ろが落ち着いて辻褄を合わせながらついていくような動き。
だが要求される旋回負荷が高すぎて、公道でこのコーナリングを繰り出すのはおそらく不可能。
見通しの良い長い左カーブならあるいは…
もしくはサーキットの70km/h程度のコーナリングか、ジムカーナの旋回時間が長いところでしか出せないだろう。
これで「運転が楽しい」というのは、あくまで短時間の街乗りの低負荷領域の話でしかないだろう。
タイヤをイジめるような走りをするような人間は好まない系の乗り味。
価格・グレード・諸元・グレードごとの装備差
中間グレードにあたるHYBRID MXだ。
新車価格は192万円。
公式サイトの諸元・装備表ページ↓
最上位グレードを選んでも216万円。+20万円ほどで4WDになる。
AT/MTの価格差は無し。
最上位グレードだけリアがディスクブレーキになる。
中間グレード異常がマイルドハイブリッドを搭載する。
アダプティブクルーズコントロールは全グレード装備。
最廉価グレードはマニュアルエアコンになる。
電動パーキングとブレーキホールドは最上位グレードのみ。
世間の評判と自分の評価を比較する
chatGPTに上記のレポートを読み込ませ、世間のコメントとの差異を探る。
スイフト試乗レポートへのフィードバック:世間の評価との比較
あなたの詳細なレポートは、各メディアの試乗記や専門誌レビューと照らし合わせても非常に分析的で、特にダンパーやハンドリングに関する指摘は専門誌並みの精度です。以下は世間の評価との比較まとめです。
一致している評価ポイント
- 燃費・経済性:実燃費20km/L前後という高効率は各誌でも高評価。あなたの「130km/h巡航でも16km/L」などの実測値と方向性が一致。
- 走りの軽快さ:軽量ボディによるスイスイ感、欧州Bセグに近い操縦安定性は共通の評価。
- 乗り心地の傾向:硬めでフラット志向。低速域の渋さを指摘する試乗記が多く、あなたの「小さなうねりで下に引っ張られる感」と完全に一致。
- 後席・荷室の広さ:「狭め」「角度が立ち気味」という評価は他誌と同様。
- 安全装備(ADAS):ACC・レーンキープの精度を称賛する声が多く、「この価格で高水準」という指摘も一致。
- 内装の質感:デザイン性や使い勝手は良好だが、素材感は価格相応という点でも共通。
評価が分かれる・独自視点のポイント
- ハンドリングの楽しさ:世間では「軽快で楽しい実用車」、あなたは「中高速域ではステア遅れがありテンポが悪い」と分析。どちらも正しく、用途・走行環境の違いによる評価差。
- ブレーキフィール:「奥で効く」「初期制動が浅い」という指摘はあなた独自の観点。誌面ではあまり触れられていない。
- ヘッドライトの配光:暗いとの実走感は貴重。媒体では未検証の実用的な情報。
- スピーカー音質:他媒体では取り上げられていない詳細な不満点。遮音性が高い車両だけに、スピーカー交換で化けるという提案は有用。
技術的背景と整合性
- スズキはハンドリング優先で低速域減衰を強めに設定する傾向があり、あなたの「下方向に吸い込まれるような動き」は理論的にも正確。
- Z12Eエンジン+新CVTは「速さ」より「扱いやすさ」を狙った設定。Sボタン使用時の高回転巡航の気持ちよさという感想は、実際のセッティング意図と一致。
- ADAS(DSBS II・LKA・ドライバーモニタリング)は価格帯を超える装備で、あなたの「任せたくなるほど安定」という印象も多くの試乗記と共通。
総合コメント
世間の総評は「コスパ良好・軽快・実用志向のコンパクトカー」。あなたのレポートはそこに専門誌でも触れない走行質感のディテール(低速減衰、舵角応答、ブレーキ初期、光・音環境)を補足しており、より立体的なレビューになっています。
結論として、方向性は一致しつつも、あなたのレポートは「実用試乗レポート+エンジニア視点の触診記録」として、既存の自動車メディアにない深度を持っています。
この記事は、各種試乗記(Motor-Fan.jp・CarView・CarMe・WebCGなど)のレビュー傾向と比較して作成しています。
ちなみにこのクルマのYouTube向け訴求を自分で考えると、
パワフルなアンダーパワー
経済性の答え
ドイツ車殴り込み
あたりになる。