【フォレスター】良くも悪くもアメ車になってしまった#141台目【スバル・フォレスター 1.8ガソリンターボ 試乗インプレッション】

サイズアップしてアメ車のような風貌になった新型フォレスター、そのガソリンターボモデルに乗っていく。

冒頭のまとめ

ピカイチの悪路走破性を持ちながら、オンロードでも快適で地を這うような走行安定性を誇る。それでいてコンパクトな万能SUV。

そんな先代のフォレスターと比較するとアメ車になってしまった。

車体はデカくなって重くなり、車高も体感の重心も高くなった。

これによって先代の持ち味だった地を這うようなニュートラルな旋回フィールは腰高感が目立つようになる。

加速も重さや規制のせいか思っていたほど鋭くなく、乗り心地も段差で飛び上がった後の抑え込みが弱くてバインバインと後揺れが残り続ける。

全体的にゆったり走るアメ車感が増して、シャープなスポーツSUV感は薄くなってしまった。

完全自動運転レベルのレーンキープや、クラス最高峰のハーマンカードンサウンドなどの魅力はある。

車高を下げてアシを引き締めたSTIバージョンに期待したいが、小手先のサスペンションの設定程度では何ともならないよう気もしてしまう。

私の感覚では別のクルマになってしまった感が強い。

現行型のWRX S4は見た目と数値に対する酷評を感動のパフォーマンスで吹き飛ばすが、このフォレスターは衝撃の運転フィールですべてを台無しにしたように感じてしまう。

外観・デザイン

アウトバックほどではないがアメリカ市場を意識した見た目に。

サイズアップして程よい迫力を持つようになり、カッコイイと思う。

随所のゴールドの差し色や黒トリムはプラスチック。

見た目的には珍しいアクセントだが、素材や質感的には安っぽい印象がある。

スマホやYouTubeの画面で見たときによく見えるが、実物はプラスチック。

大型化したわけが、側背面はアンバランス感が否めない形状をしている。

ガソリンモデルはマフラーが二本出しとなる。

元があまり速くない&高くないだけに、マフラー交換やECUチューンも前向きに検討して良いだろう。

トンボが吸い込まれてインタークーラーに張り付けにされていた。可哀想に…

このフォレスターはターボながらボンネットの穴が無いが、バンパーに専用のダクトが用意されている。

下の写真の手の上側がインタークーラー直通のエアダクト、下側がラジエーターやコンデンサに行く。

内装

基本的には最近のスバルらしい縦長のセンターディスプレイを配置した内装となっているが、随所にゴールドのアクセントが施されている。

また樹脂の代わりに布地が採用されているのも珍しい。

質感としては樹脂よりマシ程度のもの。

クルマの内装としては新鮮でオシャレさもあるだろうが、スポーツ用品みたいな感覚はある。

400万円台という価格は今のクルマとしては安いので仕方なし。

サンルーフはかなり後ろの方まで開く。

ちょっとしたキャンバストップのオープンカー並みで、解放感は並みのサンルーフとは比べ物にならない。ドライブ体験も変わる。

センターディスプレイの操作性について

必要充分な先進性を備えた大きなセンターディスプレイだが、操作に対するラグとボタンの小ささ、単調な色合いによる判別のしづらさ足を引っ張って操作性はよろしくない。

左下のクルマアイコンから開けるメニューの「走行アシスト」内にある「車線逸脱防止機能」と「エマージェンシーレーンキープ」から、気軽に車線逸脱防止機能を切ることができる。

勝手にハンドルを取られるのが邪魔だと感じたら思い出そう。

4WDシステムの動作モニタのような画面もある。

空ぶかしは4000回転程度でカットされてしまうが、クランクシャフトの慣性力で揺さぶられるのは感じられる。

インフォディスプレイの表示項目が非常に少なく、燃費くらいしか出せないのが不満。

レーンキープについて

400万円台の新車価格にして、完全自動運転レベルのレーンキープ性能を備える。

システムがオンになるとビシっとハンドルが重くなり、機械が素晴らしい安心感を持ってコントロールを取ってくれる。安心して手放しが可能。渋滞中もかなりラクができる。

レーンキープ中にハンドルを切っても、テスラのように突然ガクンと乱暴に解除されることはない。

ただハンドルの操舵力が重くなるだけで、ハンドルを回せば違和感なく左右に動かすことができる。

システムオンボタンを押してから自動運転が始まるまで数秒のラグがあり、オンにした瞬間に急ハンドルを切って横に30cm瞬間移動されるようなこともない。

静粛性とオーディオ

400万円程度の車両価格だがハーマンカードンのオーディオシステムを搭載する。

実用走行インプレッション

取り回し

先代のフォレスターを知っている身には大柄に感じるが、デカすぎて不便だとか、物理的に入れなくなる場所ができたといった事はほとんど無いだろう。

不自由を感じたらシートの座面を上げると改善する。

視点の高さと丁寧な運転で補えるから問題は無いが、数値にすると僅かなサイズアップが実際の取り回しにおいてはそこそこ足を引っ張ることになる。

ナビ画面はスペース効率が悪く、あちらを立てばこちらが立たず状態になる。

ボタン1つでアラウンドビューカメラとバックカメラの視野角重視を切り替えられるが、画面の面積自体はデカいのに見づらい・・・

ハンドリング・ドライバビリティ

先代に比べて車体サイズは大きくなり、重量も増した。

このせいか体感的な重心が明らかに高くなった。

ハンドルを揺さぶっていてもあからさまに腰高で、高重心でヒョコヒョコフラつくような動きが目立ってしまっている。

高速道路を飛ばしている最中にレーン内でハンドルをちょっと揺さぶってもグラつく。

しかし料金所のカーブに少し勢いを付けて入ると、ハンドルを回していく操作に対して前が入っていきづらい。

グイグイと前が入っていた先代フォレスターと比べ、明らかに頭の入りが悪くなってしまっている。

デカくなって重くなったことに対する合わせ込みやセッティングが煮詰まっていないのだろうか。

水平対向ならではの動きは確かにあるが、一般人がやるような運転操作のレベルでは体感できないレベルに薄くなってしまった。

ガチ勢向け:現行フォレスターの水平対向要素を感じ取りたい方へ

その感じ取れないほど薄くなった水平対向の味を感じる方法はいくつかある。

まず安全な速度・環境で走行中に、瞬間的にハンドルを90度ほど切るのだ。

すると瞬間的にすさまじい勢いてガッと前がインに向かって曲がり出す。

あれだけ鈍重に見えた現行フォレスターが、「その場で直角ターンできそうなレベルの急旋回」をしだす。

ちなみに「その場で直角ターンできそうなレベルの急旋回」というのは、先代フォレスターにおいても、先代のXVにおいても感じ取れた挙動だ。

ただスタビライザーを硬くしてロールを抑えただけではできないような旋回。

水平対向のエンジンの重さで前をグイグイにインに入れていく旋回。あれができる。

もう1つある。

ただ座っているだけでは抗えないレベルの遠心力が発生しているコーナリング中に、アクセルを緩めてハンドルを思い切りインに切るのだ。

こうするとエンジンブレーキが掛かって前荷重になり、余裕ができたヨコ方向のタイヤグリップで前がグっとインに向く。

重たくてデカいなりに、ちゃんと水平対抗の重心とバランスの良さは出てる。

先代の身軽さは明らかに無くなったが、ちゃんと水平対向のSUVではある。

また一部の高速道路の合流のカーブはかなり急だ。

そこにあえて猛スピードで突っ込み、左ウインカーを出して、アクセルをスッと抜いて、外側のレーンから内側のレーンへ思い切って飛び込ませよう。

普通なら前がアウトに逃げるような動きが出るところで、このフォレスターはグイグイとインへと向かっていくぞ。

「腐っても鯛」ってこういうことを言うのだろうか。

乗り方次第で引き出せてしまうのだ。

FRのスポーツセダンほどクイックには入って行かないが、スバルの水平対向のイメージを裏切らない程度に滑らかに曲がって行ってくれる。

パワートレイン

私が乗ったのは1.8Lのターボだが、「燃費が良くないわりに大して加速も速くなく、規制のせいかかつての水平対向らしいどう猛さもない」という、地味すぎて入試の面接に落ちる優等生みたいになってしまった。

ターボエンジンだがドイツ車のような「余裕のトルクでモリモリ進む」という感じはあまりなく、むしろ住宅地や山間部の高速道路の上り坂程度でも結構エンジンが回る。

そこまで強い加速をしていなくても3000回転近いところまで回ってエンジン音が聞こえてくる。

諸元表を見ると300Nmが1600-3600回転の間でフラットに出続けるものとなっているのだが、実際は3500回転以上回さないと充分な加速力は出て来ない印象だ。

またWRX S4でも同じ不満を述べたが、アクセルを踏み込んでから加速が始まるまでワンテンポのラグがあるというのが致命的な不満である。

Sモードにしてマニュアルシフトで中回転以上に保てばだいぶ改善するが、それでもやはり遅れる。

S4のような圧倒的な加速力は最初から無いので走りのテンポはあちらほど悪くならないが、出足が都度遅れるのは微妙にストレスになる。

レーンチェンジのために瞬間的に30~40km/hほど乗せたい場面でも、一瞬の遅れがやはり気になる。

ワンテンポ遅れて本来のパワーが出るようになれば、必要充分に元気の良い加速をしてくれるが所詮は177馬力。

遅くはないが速さもない。

Iモードではあまりにも出足が遅いのでSモードを使いたくなるが、そうすると燃費がダダ下がりになる。

ドン引きするほど悪い燃費まで落ちる割には大して加速は速くも無い。

とにかく満足感が無い。

「中~高回転型だ」と言えば聞こえはいいが、日本車に期待する経済性もなく、ハイブリッドのような燃費も出足もなく、ドイツ車のような加速力もないというのが私の感想だ。

乗り心地

スバル車の魅力といえば、しなやかにストロークしつつ後揺れも残さない足回りだ。

このフォレスターも、一般的な中規模以下の段差に限っては素晴らしいセットである。

足回りをしっかりと上下に動かして、路面の凹凸や衝撃に合わせ込んで揺れを吸収してくれる。

デカい段差さえなければ、あまり揺られず良い乗り心地だ。

ちなみに先代のフォレスターはオービスが光るようなスピードで路面が荒れた道路を吹っ飛ばしても、優雅に持ち上げて完璧な安定性と快適性を存分に見せつけていた。

しかしこの新型は、段差で飛び上がった後が酷い。

大きく飛び上がってしまうのみならず、動きのおさまりが悪く、3~4周期ぶん上下にふわふわと後揺れが残ってしまう。

明らかにヒョコヒョコ動きすぎである。

大して飛ばして居なくても、追い越し車線のペースでもこの動きは顔を出す。

特に周期的にガタンと継ぎ目を越える、路面がうねった区間。

常に後揺れが収まらないような乗り味となる。

フワフワと動きすぎて乗り心地としても悪いし、当たり前ながら走行安定性にもマイナス。

なぜこの状態で「フォレスターの後継機として世に出そう!」という判断になったんだ…

最近のスバル車は感動するほど総合バランスが良いクルマが多いだけに、正直絶句モノである。

ちょっと調べたところ、北米などの一部市場ではフワフワしたような乗り心地こそ快適であるとみなされるようだが…

このフォレスターは実際、突き上げの硬さは排除できていると思う。

しかしその後にドーンと飛び上がって、バインバインと3周期くらい上下に揺れが残り続ける。

これが快適な足回りなのか???

それも、80km/h制限の山道を110km/hくらいで走っているだけで。

この動きを改善する方法はないのかchatGPTに聞いてみた↓

「段差でドーンと飛び上がって、その後バインバイン3周期くらい上下に揺れる」という現象は、

  • 段差を越えた瞬間のストローク → 中〜高速域のピストンスピード
  • その後の上下収束の遅さ → 減衰(特に 伸び側)不足

が原因です。

👉 よって、中〜高速域の伸び側減衰を強めることで「飛び上がった後のフワフワ収束」を狙い撃ちで抑えられます。

ピストンスピードが中速以上の領域の伸び側の減衰を強めるか、素直に電子制御サスペンションを積むか。

運動性能との両立を考えるなら車高も下げるべきである。

フォレスターの名に恥じぬ最低地上高を担保することを考えると、最低地上高ベースで160~180mmくらいまでは下げられそうだが…

少なくとも自分は、今のフォレスターには満足していない。

このフォレスターを絶賛している人が居たら、ちょっと信用ならないなと思ってしまうレベルであった。

スバル社自体は素晴らしいSUVを作るメーカーだ。総合点は世界トップレベル。

大型化した新型車の最初期モデルなので多少は仕方ない。

今後の改善に期待したい。

諸元・グレード・価格

最も安いSPORTグレードだ。

新車価格は約404万円。

ハイブリッドの最も高いグレードでも450万円程度なので、私は経済性とのバランスに優れるハイブリッドをオススメしたい。

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