【スペーシアカスタム】軽でアルファードを作ろうとした結果#134台目【試乗インプレッション】

200万円程度の新車価格ながら、アルファードのような高級感を外装や走りで出そうとしているのが感じられる現行型のスペーシアカスタム。

見かけは素晴らしいが、果たして走りはどうであろうか。

確かめてきた。

冒頭のまとめ

アルファードを新車価格200万円の軽自動車に落とし込もうとしたように見える一台だ。

足回りの衝撃吸収の容量に限界を感じるが、価格や規格を踏まえれば奇跡的な総合点。

日本の軽自動車でしか出せない使い勝手の良さや経済性に、現代車でしか出せない数多の装備、そして高級車を目指した走り心地・乗り心地・内外装。それが200万円程度で新車で買えてしまう。

激戦区である軽自動車クラスの中でもトップを取れる実力を持っている。

新車価格300万円オーバーに突っ込んでいく車種がいる中で、なぜかこのクルマが200万円程度に収まっているという現実が理解できない。

ハイト系ながら走行性能にも特に問題がないのも嬉しい。

検証はしなかったが、クルコン関連の動作も非常に優秀だと聞いている。

外観

スッキリとさせつつも睨みを効かせた顔つきにはアルファードらしさがある。

オラオラすぎず、でも威圧感は出す。

先進的なテイストや高級感などの、複合的な要素をうまいことまとめ上げた傑作デザインだ。

後ろ姿も先代と比べて変わっている。

具体的にはテールランプの位置を下げて幅広にしたことで、安定感を感じさせる後ろ姿となった。

テールランプはLEDが縦に入ってトヨタのノアのようである。

内装

新車価格が約200万円ということでアルファードのようにはいかないが、安っぽさを感じさせないのみならず上質感が出るようにしている。

ワインレッドの艶消し塗装が珍しい。

トヨタのヤリスで見たようなボタンが付く。

音量や選曲の配置がちょっと独特。

電動パーキングのスイッチはシフトノブがPの位置にあるときは触りづらいが、連動して作動するタイプなので以下の画像のような操作は不要。

Pレンジに入れると自動でパーキングブレーキが作動するため、この画像のような操作は不要。

ハーフレザーのシートも上質感をプラスしてくれている。

静粛性とオーディオ・ナビシステム

スズキ社とトヨタ社(というかデンソー?)は連携しているのだろうか?

ただのナビではなく、燃費やアラウンドビューカメラなどの機能が埋め込まれている。

エネルギーフローの画面もある。

静粛性については、60km/h台でのロードノイズが少々大きい印象。

雨上がりの路面なので水しぶきを巻き上げていたが、路面自体はそこまで荒れていない状態だった。

価格に対する異様な完成度のために、遮音が多少削られている可能性がある。

オーディオについては400万円台のクルマにも勝るレベルの素晴らしいものを持っている。

音量を上げても全く鮮明さが落ちず、迫力ある音を味わえる。

美しい高音のエネルギーが直に響いてくるようなオーディオ。

BYDやヒョンデでもないと体験できないような空間が出ている。

実走行インプレッション

取り回し

小回り性能や視界性能が抜群に良い。

またBYDの80%相当の非常に高品質なアラウンドビューカメラシステムも搭載しており、この上なく丁寧なサービスだ。

パワートレイン

ターボ搭載の恩恵は大きい。

加速に必死さが無く、少し踏むだけで軽やかに前に出る。

結構踏み込んでも、回転数はあんまり跳ね上がらない。

常にレッドゾーンに張り付きながら必死に走っていた先代のスペーシアギアのノンターボとは大違いである。

パドルシフトが搭載されているのが面白いポイント。

Dレンジの下は「M」となっており、回生ブレーキなどの操作はパドルを引いて行う。

疑似的に6速トランスミッションとして操ることができ、長い下り坂でのエンジンブレーキの強さ調整が簡単だ。

ディジタルメーターの中にタコメーターを表示させることもできるため運転が結構楽しめる。

ハンドリング

リニアな特性。

切り始めから穏やかに曲がっていく。

急カーブにおいて、要求される舵角自体は多めであるが、旋回が遅れるということは無い。

ハンドルを揺さぶると結構大きく傾く。ロールを抑える車が多い中で、この車は結構大きく傾けている印象を受ける。

しかしこの傾きは、背の高さに起因するもので、乗り物の姿勢としては安定している。

旋回はショートファイルベースを活かすものとなっていて、前後方向に短い車体がスイスイ曲がって行く。

ハンドリングについてだけど、ペースを上げて走って行っても全然不安な感じがない。

人間の操作に対して遅れることも過激・過敏なこともなく、何かイレギュラーな感じもなく。

ただ普通に無難に滑らかに走れてしまう。

コントロール感や楽しみは希薄だが、万人向けのクルマとしては良いところを突いていると思う。

ある程度元気に飛ばして走りたい人も、フツーのペースで走る人も、凍結した雪道を走る状況においても、みんなが安全に乗れる無難な完成度となっている。

乗り心地

ボディ全体の箱を優雅に上下に動かすような、アルファードっぽい動きを目指した足回りである。

しかしショックアブソーバーの衝撃吸収容量に限界があるのか、荒れた路面に差し掛かると弱いところが出て来る。

段差を越えた際の入力に大してダンパーを動かして対応する車種が多い中で、このクルマはボディ全体をふわふわと優雅に動かしながら合わせ込んでいくような動かし方をする。

アルファードやクラウンのような高級車セグメントの乗用車がたまにやっている動きだ。

ただ抑え込むだけではなくて、微振動を吸収しにいくような動きをダンパーに持たせようとしているようにも感じられる。

目に見えない下回りにおいても高級車らしい乗り味を出そうと努力しているようだ。

強い衝撃を受けた際はドンッとバンプラバーにブチ当たってしまう。

特にペースを上げた状態で荒れた路面に突っ込むと、上下方向にバンバンと跳ね上がる動きとなってしまう。

穏やかな路面では高級車っぽく走ってくれるが、ちょっとでも路面が悪化すると現実に引き戻される。

衝撃吸収のキャパシティを超過しない範囲の衝撃や飛び上がり程度なら、下回りのブブンをコトっと動かし、その後も優雅に持ち上げながら上質な乗り味を出そうと頑張ってくれる。

日常的に走る道の路面がガッタガッタで、しょっちゅう穴ぼこに落ちたり段差で飛び上がるような道ならば、「所詮は200万円の軽自動車か」という評価になるかもしれない。

逆に路面状態が良く、ちょっとマンホールに一輪だけ落ちたり、軽いうねりを通過する程度であれば、アルファードを目指した乗り心地を感じることができる。

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