EV専用だったフィアット500eに、まさかの“ガソリン&マニュアル”モデルが登場へ!

かつて完全な電気自動車(EV)として登場し、未来のシティコミューターとして注目を集めたフィアット500e。しかし2025年夏、フィアットが下した決断は、誰もが予想していなかったものでした。

それは──
「ガソリンエンジン」と「マニュアルトランスミッション」の復活です。

一度はEV専用として再設計されたプラットフォーム上に、再び内燃機関が搭載されるというこのニュース。単なる懐古主義ではなく、現在の欧州市場とEV戦略における深刻な“転換点”を示しているかもしれません。


■ なぜ「EV専用車」がガソリン車に戻るのか?

フィアットがこのような大胆な方針転換に踏み切った背景には、いくつかの現実的な理由が存在します。

1. EV市場の伸び悩み

2020年代前半、欧州各国はEV推進政策を強化してきましたが、2024年以降は明らかなペースダウンが見られます。特にエントリークラスのEVは、

  • 車両価格の高さ
  • 充電インフラの不十分さ
  • 航続距離への不安

といった理由から、思ったほど需要が伸びていないのが実情です。

2. マニュアル車への根強い人気

フィアットの地元イタリアを含む南欧地域では、MT信仰がいまだに根強く残っています。若者層の「運転する楽しさ」や「維持費の安さ」を重視する声に応える形で、MTモデルの需要はゼロではありません。

3. コストと価格の問題

EVは構造的に高価になりがちですが、マイルドハイブリッド+ガソリンエンジン+MTという組み合わせであれば、比較的リーズナブルな価格帯を維持可能。これは特にインフレに直面する欧州庶民にとって大きな魅力となるはずです。


■ 気になるスペックは? フィアット500 “Ibrida”の仕様予想

新型モデルは、**「Fiat 500 Ibrida(=ハイブリッド)」**という名称で展開される見込みです。以下に現在報じられている仕様や、予想スペックをまとめます。

項目内容(予想・一部確定)
パワートレイン1.0L 直列3気筒 FireFly ガソリンエンジン(マイルドハイブリッド)
トランスミッション5速マニュアル
最高出力約70〜80ps(予想)
トルク約90〜100Nm(予想)
駆動方式FF(前輪駆動)
燃費性能WLTP基準で20km/L以上を想定
プラットフォームEV版500eと共通のモノコックシャシー
装備アナログ寄りのシンプルなインテリア、先進安全装備は限定的
価格帯(欧州)約15,000〜18,000ユーロ(日本円換算:250万〜300万円前後)

注目ポイントは、プラットフォームが500eと共通であること。
つまり、見た目は現代的でEVらしいのに、中身はクラシックな内燃機関車。デザインとドライバビリティのギャップがむしろ新鮮に映る可能性があります。


■ EVから「逆行」することは悪なのか?

一見すると、フィアットのこの戦略は時代の流れに逆らっているように見えます。しかし実際には、これは**EV至上主義への“現実的な修正”**とも言えるでしょう。

  • EVでは届かない価格帯にアプローチ
  • 充電環境が未整備な地域でも販売可能
  • 走る楽しさとレトロ感を重視する層へリーチ可能

環境対応の面では当然EVのほうが理想的ですが、すべての消費者にEVが最適とは限らない。そうした“隙間”を狙うような存在として、ガソリン+MTのフィアット500はむしろ面白い立ち位置に見えてきます。


■ 今後の展開と日本導入の可能性は?

現時点では欧州市場向けの展開に限定されていますが、日本市場でも500(チンクエチェント)シリーズは一定の人気があります

日本ではすでにEV版500eが限定導入されているため、同じボディにガソリンエンジン&MTが載ったモデルが追加されれば、「走りの楽しさ」を重視するファン層には魅力的な選択肢となるでしょう。

ただし、

  • 排ガス規制
  • 衝突安全基準
  • AT需要の強さ

などの理由から、日本市場での販売はハードルが高く、導入されるとしても限定的になる可能性が高いと考えられます。


✅ まとめ

EV専用として登場したフィアット500eに、まさかのガソリンエンジン+MTモデルが追加されるという今回のニュースは、単なる“退行”ではありません。

むしろそれは、今のEV市場における課題や、消費者の本音を反映した柔軟な戦略変更とも言えます。

「未来の車」が、もう一度“原点”に立ち戻って再出発する──
そんな逆説的な進化を、フィアット500が体現しているのかもしれません。

上部へスクロール