2.5リッターのV6エンジン、電動ハードトップなどの唯一無二のキャラクターを持つレクサスのISコンバーチブル。
その快音や強烈な加速、快適に風を楽しめる時間は唯一無二の価値であり、想像を凌駕するものであった。
冒頭のまとめ
不人気車のイメージに反して、最高のスポーツコンバーチブルだった。
閉めて街乗りする分には滑らかで快適な乗用車だが、屋根を開ければ素晴らしいほどの解放感と風の吹き込み。
2.5リッターのV6エンジンは街乗りでは存在感を感じないが、ベタ踏みして全開にすると中回転域以上から恐ろしいほど獰猛にブン回っていく。
しかしシャシー性能は負け気味で、特に穴ぼこに落ちる状況で大きくハンドルを持って行かれる。
乗り心地も良いのだが、段差を越えた際にボディ全体が崩れていくような動きが出る。
その際の感覚は同年代の低価格帯の軽量スポーツカーとソックリ。
快音を響かせながらV6エンジンで吹っ飛ばせば、そういう弱点は全てどうでも良くなる。
外観・デザイン
オープン
正面から見えるとISの屋根が無くなっただけであるが、横から後ろに掛けて唯一無二のスタイリングを放つ。


2000年代前半ごろってこういうオープンカーがちょくちょくあったよねぇ…


テールランプ内部のLEDが美しく光っており、意外と古さを感じさせない。

ちなみにトランクは鬼のように重い。
屋根を畳むスペースを荷物室として使うための仕切りがあるが、何か所もある左右の複雑なツメをしっかりとハメ込まないとエラーが起きて屋根を開けられなくなる。
荷室を拡張する必要が無いなら不用意に触らない方が良い。

エンジンルームはフルカバー。2.5リッターの時点でかなり熱そうだが、3.5リッターなんかブチ込んで大丈夫なのだろうか..

クローズ
4ドアセダンを強引に2ドアハードトップコンバーチブルにしたような独特な見た目。

「ダサい」と思われても仕方ない

内装
実車に対面するまでは年代の通りに古臭いなと思っていたが、いざ乗り込むと「まだ普通に行けるジャン」となった。



またカーナビが思いのほか高性能で、2025年にもストレスフリーで使える。

拡大縮小は両脇のボタンをその都度押さないといけないし、GoogleMapのように指でグリグリ動かすのではなくて、タッチした地点にカーソルが動いていく方式。
しかし使い勝手は良好で案内も分かりやすい。

左から回り込んでいく定番のゲート式シフト。サイドブレーキは左足の足踏み式。
小物入れやカップホルダーなどのスペース効率は悪い。
ちなみにversion Lではシートベンチレーションが付けられるらしい。

エアコンの風向きと風量は、左上のエアコンボタンをタッチしてから液晶内で行う。


静粛性
幌屋根のオープンカーと比べたら普通に静かだが、床下からの振動やロードノイズがかなり入ってくる。
これでは大衆車セグメントと同レベルだ。
メタルトップのおかげで上が良くても、これだけ下側がガバガバでは「静かだ」とは言い難い。
幌屋根のオープンカーと比べると、スピードを出ても普通の乗用車として乗れるけどね。
スマホとのBluetooth接続について
後期型のISコンバーチブルはApple CarPlayが使えるらしいが、そうでない場合にスマホを繋げたければAUXに流し込む必要がある。
二列目の居住性
レッグスペースは大人が座れる程度にはあるが、座面の角度が断崖絶壁のようにそり立っている。
この車内に小人が住んでいたなら、この二列目は身投げの名所と化していたことだろう。

具体的に例えるならスーパー銭湯の露天風呂って基本的に岩盤だろう?
あの岩盤の外周のうちの、ぜったい人が腰かけることを想定していない部分に強引に座ろうとする。
すると身体が引っ掛からずにズイーっと滑り落ちていく。
あんな感じの断崖絶壁。

あんな角度で座らされて屋根を開けても、プレミアムセダンとして楽しめるわけがない。
レッグルームではなく座面の角度の問題なので、子供だったら良いというものでもない。
二列目は人が乗るようなものではないというのが私の結論だ。
ちなみにトランクスルーは無いようで、サイズのわりにスペース効率は悪い。
中央部のレバーからヘッドレストをパタンと畳むことが可能。ロールバーの穴から後方が見通せるようになる。どうでもいい

乗降性の悪さ
前後に長いドアは幅を取る。
隣のそこそこ離れたところに軽バンが居るのだが、ドアを開けると乗り降りには余裕がない。

車体自体の幅は大したことないのに…
私が持っていたNCロードスターとの比較
私はNCロードスターを持っていたが、あちらは二列目部分の荷物置きどころかシートを倒すことすらできなかった。長旅には到底行けない。
RHTという電動ハードトップバージョンはあるが、幌屋根なら風切り音や断熱も弱い。
お金に余裕があるならISコンバーチブルを買った方が良い。
実走行インプレッション
取り回し
小回りは結構効いてくれるが左フロントが見えづらい。
縁石に沿って左折していく場面では、どこに縁石があるのか事前に見定めておかないと分からなくなる。

それ以外は普通のコンパクトセダンとして運用できるので特に問題は無い。
パワートレイン
レクサスといえば純正バランスチューンが為された粗の無いエンジンだ。
このISもその魅力を持っており、空ぶかししてもエンジンの内部が暴れるような感覚は無い。
非常に滑らかに回転数が上がって行く。
馬力や排気量のわりにやけに加速が速く感じる理由でもあるだろう。
この滑らかさは街乗りでフルに発揮される。
低回転域で全く音と変速ショックを起こさずに滑らかに転がしていき、上り坂で踏み込んだりしない限りトルク不足を感じる場面はない。
60km/h程度で6速に入れてしまって、常時1200回転以下で走る。
この215馬力の2.5リッターのV6エンジン、イメージよりも遥かに音が良くて加速も良い。
1.7トンもあるとは思えないくらい元気よく加速していく。
しかし複数の要因から楽しみ切れない、それがもどかしいのだ。
まず1つめの問題はワイド過ぎるギア比の6速AT。
2速でレッドゾーンまで回しただけで100km/hを越えてしまう。
そこらへんの峠道ではエンジンのオイシイところを使い切れないのだ。
3速なんて、ガラ空きの高速道路か田んぼのど真ん中でもないとベタ踏みし続けられないぞ。
2つ目の問題はエンジンの音。小さすぎる。
絶対にご近所迷惑にならない点は良いのだが、自分自身がせっかくのエンジンサウンドを楽しめないのだ。
まともに聞こえてくるのは4000回転以降だ。
3つ目の問題は開けた際の風切り音の大きさ。
これでただですら小さいエンジン音がかき消される。
ちなみにこのエンジン、非常に燃費が悪い。3.5リッターなんじゃないかと見間違ったほど。
混雑した市街地ではリッター5km代に瞬間的に落ちることもある。
ほどほどに流していてもリッター10kmを越えられないレベル。
アクセルを完全に抜いた際の空走力が非常に高いため、燃費を出したければ先の道路状況をしっかり頭に入れて乗ってやる必要がある。
もちろん無駄なアクセルオンは厳禁なのだが、そんな思いをしてまで運転するくらいなら素直にハイブリッドカーに乗るべきだ。
思い切ってブン回そう。

ちなみにブレーキについては奥の方で効き始める特性となっている。
アクセルを抜いた瞬間に強い回生ブレーキを掛ける電動車が増えてきたため、慣れが要求される。
乗り心地
アシをコトンと大きめにストロークすることで段差の衝撃をしっかりと受け止めてくれるが、フワフワもさせないため実用域での乗り心地は良い。
この手のスポーツ車はやけに硬いことがあるが、まったくそんなことはないぞ。
例えば「ただ減衰をギッチギチに締めて剛性が足りないボディーを強引に安定させる」といったことはない。

しかし一部分だけ陥没地帯が存在しているような場面で凹んでいるところにタイヤが落ちると、ズダダダドンと振動が入ってくる。
ハンドルもかなり揺さぶられる。
この感触は一昔前の低価格帯スポーツカーだ。
オープンボディーで剛性を出しづらいわりに重量が嵩んでいる点が悪さしているのだろうか。
ハンドリング
シャキシャキとしており軽快で非常に楽しい。
それでいて急ハンドルを切ってもbmwのような危険性はない。
切り始めた瞬間は穏やかに動いていくが、足回りに意図的に負荷をかけると良い応答性を発揮してくれる。
穏やかに気持ちよく流したいオープンカーとしても、元気よく峠道を攻め立てたいスポーツセダンとしても満足できるものだ。
入り口でパッとハンドルを切って旋回姿勢を作り、その形のまま抜けていくようなコーナリングが適している。

シャキッと姿勢が定まるためワインディングを流していくのが気持ちいい。
車体がスリムなので細いワインディングでも「車線に車体を収めるだけでいっぱいいっぱい」なんてこともない。
FRらしく前と後ろのタイヤが別々の仕事をしてくれるため、ペースを上げてもあまりタイヤがキツくならない。
しかし段差や路面のうねりにハンドルを持っていかれるような動きが出がち。
乗り心地の段落でも述べた陥没地帯に片輪だけ突っ込んでいくような場面ではかなりハンドルが持って行かれて吹っ飛びそうになるし、田舎道の穴ぼこにも流されて田んぼに落っこちそうになる。
ステアアシストもないため、注意力が落ちている場面では無理に走らず早めに休憩を入れたいところ。
超高速域
レクサスお得意の純正エンジンバランスチューンの成果なのか、200馬力ちょいしかないわりにやけに加速が速い。
恐ろしい加速力で吹っ飛んでいき、あっという間に160km/hオーバーに達してしまう。
スピードを出していてもあまり風に振られず、屋根を開けていてもサイドウィンドウさえ上げていれば身体全体に風がとまとわりついてくる。
しかし穴ボコに落ちた際にゼロストロークでハンドルに衝撃が入り、ダンダンダンと暴れて安定性を失う。
飛ばすつもりなら路面状況には一層注意しなくてはならない。

また穴ボコに落ちるのではなくて、継ぎ目がジャンプ台のように作用して飛び上がるような場面でも瞬間的に完全に宙に浮いてしまうようだ。
段差に落ちた際の衝撃耐性の無さはこのクルマの弱点として挙げさせて頂こう。
クルマの総合バランスとしても、加速力だけが突出している一面を持つ。
これが乗り心地も走行安定性も下げている。
オープンボディの弊害なのだろうか、年式の問題なのだろうか。
しかし、多少のスリルや危険性はありつつも吹っ飛んでいく痛快な加速力は素晴らしい。
屋根を開けているとほとんどエンジン音は聞こえてこないが、フェラーリにでも乗っているかのような爽快感で飛ばすこともできる。
まとめ
正直、買おうか本気で悩んでいる。

オープンカーの中でもトップクラスに風を感じやすく、純正バランスチューンが入ったV6エンジンは気持ちよく痛快にブン回る。
都会で穏やかに流していても燃費が悪い以外は快適で素晴らしいし、空いているところを飛ばしても痛快で気持ちいい。