【2代目タント】安さと使い勝手に全振りした割に上出来な100万円台前半#121台目 【試乗インプレッション】

もう街中で見かけなくなったレベルで古いクルマに乗れるのがカーシェアの魅力。

2010年前後に生産された2代目のタントを試していく。

冒頭のまとめ

安さと使いやすさに全振りしたクルマとしては上出来。

究極の経済性とスペース効率を誇る。

ある程度アシをストロークする動きや滑らかなハンドリングには意外な乗り味の良さを感じるが、ちょっとでも路面状況が悪化するとバッタバタになってしまう。

路面状況の影響で突然挙動が変わるため「なんだちゃんと走るジャン」と飛ばすとツケを払わされそうだ。

外観・デザイン

今となっては古いが、誰がどう見てもタント。都会でも田舎でも見ない日は無い。

箱型ボディーであることを規格に強制されるセグメントだが、角っこを丸めた可愛らしいデザインで単調さを避けつつ愛らしさを出している。

視線も自然とヘッドライトに集まってボディーの角張りが気になりづらい。

デザインの方向性はシエンタに近い。

正面から見ると笑っているような顔つき。ミラーが耳たぶに見えてくる。

静粛性とオーディオ

50km/h程度でも同乗者との会話に差し障りがありそうなレベルの静粛性。

どこが悪いなどど感じることはあまりなく、そこらじゅうから音が入ってくる感じである。

カーオーディオについては意外と音量が足りている。

ロードノイズにかき消されて聞こえないということはあまりない。

しかしシャカシャカとした音が混じっていたり、音質そのものが良くは無かったりする。

ただ音楽を聴けるというだけだ。

内装

新車価格100万円台前半のクルマであったが、素材こそプラスチックだが安っぽいイヤな感じはない。

むしろ濡れ雑巾を一枚持ち込めば綺麗に保ちやすいように感じる。

コラムシフトはイメージに反して使いやすい。ギアの一個一個がクッキリ入る。

マニュアルエアコンも迷いようがない。

収納も車体サイズからは考えられないほど豊富。

メーターの中の電子画面は燃料計と距離メーターのみ。

二列目は左側のみスライドドア。側面にはカップホルダーや簡易的な小物入れが備わる。

実走行インプレッション

取り回し

コンパクト箱型ボディに定評のあるタント。

数え切れないほどある市販車の中でもトップに挙げられる乗りやすさと感覚の掴みやすさだ。

自動車というか座席付きの箱に座っているような感覚で乗れる。

セダンタイプに慣れていると逆に戸惑うレベル。

パワートレイン

典型的なノンターボCVTだ。

交通の流れに乗るだけでも余裕がない。

赤信号からの発進は軽さが効いてそこそこ行けるが、40km/hくらい出ると途端に力が無くなる。

必死で踏んでエンジンを唸らせたところからさらにもう一段階踏み込んで、やっと交通の流れについていける程度の物。

川や線路を乗り越えるための橋の上り坂でも失速する。

ブレーキは踏みはじめが少々スカスカに感じるが、必要充分な制動力を立ち上げてくれる。

飛ばすようなクルマでもないので大きな危険はない。

乗り心地

ダンパーがしっかりストロークしていってくれるため、意外と乗り心地が考えられた足回りであることを感じられる。

劣化があるため正確な評価はできないが、中くらいの荒さのうねっているような路面には車体と足回りをふわふわと動かすような乗り心地が快適。

しかし微振動を抑え込む能力が低く、常に衝撃が体に入り続けているような感触。

ガタガタした路面ではバタンバタンと足が動きまくる。

本来ダンパーというのはこういう揺れを打ち消すために使うものだと思うのだが、これはただ上下にバタバタ動いているだけだ。

すぐに底付きして金属と金属を叩きつけるような衝撃が入ってきてしまう。

この叩きつけはダンパーの劣化によるものである可能性がある。

ハンドリング

意外にも穏やかで落ち着いていて乗りやすい。

ハンドルを切れば滑らかにロールしながら傾いていき、やがて収束する。

その動きは終始安定しているため怖さや不安定感を感じることは無かった。

アウト側のフロントタイヤを押し付けて安定させる定番の動きであり、極端にフロントのスタビライザーを突っ張らせているような感触もない。

全高ゆえか車体の傾きは大きく感じるが、その見かけほど旋回中の重心は高くない。

急ハンドルを切っても少しだけタイヤがねじれる動きが出る程度。そこまで遅れずにストレスなく付いてくる。

しかし旋回中に段差を飛び越えると一気に崩れて暴れるような動きが出る。

その先は危ないので試していないが、無謀な乗り方をしていると突然裏切られるという印象がある。

高速安定性

横風が厳しいことに定評のある伊勢湾岸自動車道を100km/hで走ったが、ほぼ問題がなかった。

おそらく横風が無風に等しいほど弱い日だったのだろう。

一般的に軽ハイトワゴンは横風と路面のうねりに弱いという弱点を持つ。

このタントもおそらく例外ではないため、80km/h制限の山道や横風が激しい状況に直面すると一気に評価が変わる可能性が高い。

しかしほぼ無風&フラットな路面においては、直進性に不満を感じることは無かった。

しかしあまりにも何も起こらないので揺さぶってみようと思い、すこし強めにハンドルを切ってレーンチェンジしている最中に不穏な動きが出た。

レーンチェンジ中にガタガタとした穴ぼこ路面を越えた際に、フロントがガタンと滑るような動きを感じたのだ。

もし路面が湿っていたり、もっと強い旋回方向への負荷を掛けていたら非常に怖い思いをしていたことだろう。

諸元・価格など

2007~2013年まで売られていた、新車価格100~180万円くらいのクルマであった。

私が乗ったのはノンターボの廉価グレードだが、ターボのカスタムモデルでも200万円程度に収まってしまう。

4速ATとCVTの2つの変速機があった。

グレード名を調べる時間が無かったので、適当なノンターボFFの廉価グレードの諸元表を載せておく。

ダイハツ タント Xリミテッド(DBA‑L375S) 2008年12月 CVTモデル
駆動方式FF
ドア数5ドア(片側スライド)
乗車定員4名
型式DBA-L375S
全長×全幅×全高3,395×1,475×1,750 mm
ホイールベース2,490 mm
車両重量930 kg
エンジン型式KF‑VE
エンジン種類水冷直列3気筒DOHC12バルブ
排気量658 cc
最高出力58 PS(43 kW)/7,200 rpm
最大トルク6.6 kg·m(65 N·m)/4,000 rpm
内径×行程63.0 mm × 70.4 mm
圧縮比10.8
使用燃料無鉛レギュラーガソリン
燃料タンク容量36 L
燃費(10・15モード)20.5 km/L
トランスミッションCVT(無段変速)
変速比(前進)3.327~0.628
最終減速比5.444
サスペンション前/後マクファーソン・ストラット/トーションビーム
ブレーキ前/後ディスク/ドラム(リーディング・トレーリング)
タイヤサイズ145/80R13 75S(前・後)
最小回転半径4.2 m

参考↓

まとめ

ダンパーが劣化していたのだろう。

ストロークのある足回りは穏やかにうねった路面でしか効果を発揮してくれなかった。

蓄積した微振動のせいか、足が筋肉痛になった。

安さ、意外と安定性が高かったハンドリング特性、そして広大な車内空間は評価に値する。

乗り物の想定スピードを踏まえて穏やかに乗っていれば危険もないし、壊れるような感じもない。

安いアシとして2代目タントの中古を検討している人がいれば、「まぁ良いんじゃない?」と私は言うだろう。

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