世界には”買ったら終わり”では済まされないクルマがある。 その最たる例が、Bugatti(ブガッティ)がわずか40台限定で生産したサーキット専用ハイパーカー「Bolide(ボライド)」だ。
このマシン、ただ速いだけではない。とんでもない金額で購入され、さらに維持するためのコストが常軌を逸している。この記事では、その驚愕のスペックと、誰もが目を疑う維持費の実態を徹底解説する。
Bugatti Bolideの基本情報
- 車両価格:€4,000,000(約6.7億円〜7億円)
- 生産台数:世界限定40台(すでに完売)
- エンジン:8.0L W16 クアッドターボ
- 最高出力:約1,600〜1,850PS(仕様により異なる)
- 重量:約1,240kg(コンセプト版)〜1,450kg(市販版)
- 0-100km/h加速:約2.2秒
- 最高速度:理論値で500km/h超(実際は380km/h程度に制限)
航空機並みの設計思想と、レースカー並の素材と技術が詰め込まれた、まさに「地上の戦闘機」だ。
タイヤ:60kmしか持たないスリック
Bolideに装着されるのは、F1やWECマシンと同じレベルのカスタムスリックタイヤ。このタイヤ、走行距離にしてわずか約37マイル(約60km)で寿命を迎える。
- 価格:1セット約8,000ドル(約80〜90万円)
- 交換頻度:1日で使い切るレベル。数周のサーキット走行で終了。
さらにタイヤゴムは5年で経年劣化するため、使用しなくても交換が必要という厄介さもある。
ブレーキ:F1と同じカーボン–カーボン式
一般的なスーパーカーにはカーボンセラミックブレーキが装備されるが、Bolideに採用されているのはそれを超える**”カーボン–カーボンブレーキ”**。
- フロント:直径390mm × 37.5mm厚、8ピストン
- リア:390mm × 34mm厚、6ピストン
これらはF1やLMDhマシンと同等の制動力を持ち、1セットあたりのコストは推定数百万円。耐熱性と軽さは桁違いだが、サーキット走行数回で消耗していく。
エンジンオイル交換:220万円超
W16エンジンのオイル交換も桁違い。バラして点検する必要があるため、
- 作業時間:27時間
- 費用:約21,000ドル(約220〜250万円)
専門スタッフによる分解と再組立て、さらにトルク管理を含めての作業になる。
消耗品と安全装備:命を守るにも使用期限あり
Bolideは完全にレース基準で作られているため、以下のようなパーツにも使用期限がある:
- シートベルト:FIA規定により2年で交換推奨
- 衝撃吸収パッド:経年で性能劣化、数年で交換必要
- 燃料タンク(フレキシブルタイプ):約5年で交換義務
- 消火システムのバッテリー:1年で寿命、毎年交換が必要
これらは一般使用では「絶対交換しなければならない」わけではないが、サーキット走行やイベント出場を想定すると交換は必須になる。
フレキシブル燃料タンクとは?
Bolideに搭載されているのは、戦闘機やF1マシンでも使われるフレキシブル燃料タンク(ブレダー式)。耐衝撃性に優れ、燃料漏れを防ぐ構造だが、素材がゴムやケブラーのため、5年で劣化し交換が必要。
- メリット:安全性が極めて高い
- デメリット:寿命が短く、コスト高
月に500万円?維持費の現実
サーキットで1日走行すれば:
- タイヤ:80万円
- ブレーキ摩耗:数十万円〜100万円以上
- オイル交換(定期):220万円
- 安全装備の定期交換(年割換算):月20〜30万円相当
これらを合算すれば、月500万円を超える維持費も現実的。とても”普通の金持ち”には維持できない。
まとめ:維持費すら芸術品レベルのクルマ
Bugatti Bolideは、スペックも価格も桁違いだが、維持コストの異常さこそが本当の狂気かもしれない。
購入には数億円、維持には毎月500万円——。
それでもこの車を所有する人たちは、その”非日常”を楽しんでいるのだ。
これこそが、ハイパーカーという世界の頂点に君臨する理由である。