【モデルY LR】見た目はファミリーカーでも中身は硬派スポーツ。爆速だが足元がバタつく#111台目

試乗インプレッション
スポンサーリンク

冒頭のまとめ

幅がデカいが意外にも取り回しは悪く無い。

テスラのミドルサイズクロスオーバーとして、期待を裏切らない構成となってる。

しかしエア圧のせいもあるがバンバンと飛び跳ねがちな乗り心地や、段差を越えるたびに四輪でバタついてしまう足回りなどなど運転フィールに難点も多い。

爆速で俊敏に動くが、無理は禁物である。

外観・デザイン

実物はすっきりとしたスタイリングが魅力。

盛り上がりながら滑らかにリアへと流れていく。

※下のgifの赤いモデルYはパフォーマンスグレードです。

インテリア

テスラに乗り慣れている人には特段と目新しいものはない。

オーディオと静粛性

基本的に静粛性は高めだが、床下からゴーというロードノイズが響いてくるような感覚がある。

こだわるならフロアマットを剥がしてデッドニング(主に制振)を入れたい。

音響については最高峰のものが入っており、いろいろなスピーカーをフルに活かしている。

低音で車全体が響くレベルだ。

(イコライザー機能の強調設定次第だが…)

音量を上げても鮮明で高音が美しく反響するし、あちこちから音を鳴らすので音楽の構成要素が別々の方向から聞こえてきて臨場感がある。

追加の出費なしで最高の音響体験ができる。

車中泊

いかにも車中泊適正は高そうだが、身長170cm程度でも二列目を倒して寝転べば前後の長さが微妙に足りない。

頭の先端が少しはみ出しそうになる。

勾配も少々ある。

いかにも車中泊適正が高そうに見えるし、実際に車内は広くて収納も多いが、ベスト車中泊カーでは無いだろう。

大容量バッテリーとヒートポンプ式エアコンによって抑えられる電力消費の合わせ技で、ずーっと響くエンジン音や排ガスのまき散らし、不快な暑さや凍えるような寒さとは無縁の車中泊ができるのはうれしいポイント。

(…なんて言っておいてアレだが、実は冬の寒さはモバイル電源+電気毛布で充分しのげてしまう)

実走行インプレッション

取り回し

このクルマのサイズ感は前後に4750mm、幅は1920mm、最小旋回半径は6.1メートルだ。

前後の長さは並みだが、1920mmという幅と6.1mの旋回半径は取り回しがたいへん悪そうに見える。

視点の高さやら視界の広さにより、実際に運転していてサイズが気になることはほぼ無い。

ミッチミチになるような細い道でも意外とスイスイ走れるため、ある程度運転に慣れている人なら車体サイズを過度に恐れることはない。

もし貴方がモデルYを気になっているけど、「1920mmも幅があるのはなぁ…」と思っているのなら、とりあえず試乗してみると良いだろう。

シートの座面を上げて乗ると取り回しがよりラクに感じられるようになる。

ヨークでの運用を想定しているのか、ステアリングは一回転程度でロックする。

慣れるまでは駐車場内の曲がり角などでハンドルを回し過ぎてガンッと当ててしまう。

後述する旋回特性と合わせ、ハンドルはゆっくり回す習慣をつけたほうがよい。

さて普通に走っていてはほぼ気にならない1920mmだが、路肩に寄せて路駐するような場面では左フロントが非常に非常に見づらい。

左ウインカーを出して、左の映像を出しながら寄せて行っても50cmあたりからもう何もわからない。

私が借りた個体にも左フロントのホイールにのみガリ傷が入っていた。

幅が1920mmもあれば、左をキッチリ寄せても右が結構出る。

その手の路駐が多いユーザーは要注意だ。

モデルYに限ったことではないが、アラウンドビューモニターを装備していないのは不満。

またウインカーの応答性が安定しないのも気になる。

一回倒すと勝手にレーンチェンジ完了を認識して切ってくれるのは便利なのだが、勝手に切れたり出しっぱなしになったり。

数時間試乗した程度では、この安定しない動作がよくわからなかった。

反対側に半クラッチすれば確実に切れるが、周囲の交通状況に意識を取られていると行き過ぎて逆側のウインカーをオンにすることも。

ハンドリング・ドライバビリティ

少し切っただけでいきなりグワっと動いていくほどクイック。

ハンドルを少し回すだけで一気に車が動き出すため、慣れるまでは意識してゆったりとハンドルを動かしてやる必要がある。

切り始めでフロントのアウト側を押し潰し、前下がりの安定した姿勢のままグワっと行く。

その旋回は強烈で限界は果てしなく遠く感じる。

車重は約2トンあるわけだが、加速にも旋回にも全く重さを感じさせない。

これだけの運動性能を持ちながら、まだロングレンジグレードなのである。

立ち上がりではアクセルを踏んでアウトに膨らませていけるため、首都高のような幅の狭いステージでもライン調整がしやすい。

しかし段差を越えた際に四輪がバッタンバッタンとあちこちに揺さぶられて車体側が乱されるため無理ができない。

車は真っ直ぐなのに、段差を越えると四輪が別々というか、ボディーがあるときは右後ろに沈み、またあるときは左前に沈むといった具合に安定しないのだ。

車の直進性自体に問題はないが、重量と衝撃を受け止める足回りの堅牢性に不安と疑問を感じる。

また大きめの段差を超えた後の飛び上がりと路面へと引っ張るような動き、四輪のバタバタも気になる。

空気圧が310kpaも入っていたのと20インチの大型なホイールを搭載していたというのは大きいだろう。

パワートレイン

ご存じの通りロングレンジグレードでありながら、444馬力に590Nmという、2000年代前半のスーパーカーレベルのパワーを持っている。

2トン級のSUVでありながら0-100加速は約5秒。

そこらへんの街中をゆったりと走っているようなSUVだが、ベタ踏みすると強烈な加速が襲う。

心臓を掴まれそうな気持ちになるほどの鋭い。

しかしこのクラスの速さのクルマにもそこそこ乗り慣れている私には、タイヤ的にもGの強さ的にも、そこまで恐れずにどこでもドカンと踏めるレベルに収まっていると感じた。

しかし100km/hから上の伸びは強烈。

EVの中では300馬力級の出力を持ちながら、100km/hを過ぎるあたりから加速が陰る車種が多い。

しかし本車は160km/h程度までならスルスルと軽やかに一瞬で駆け上がる。

2トンの車重を感じさせない軽やかで鮮烈な加速は病みつきになりそうだ。

乗り物の動きに危なさがないため、割とそこらじゅうでドカンと踏めそうなのも良い。

ブレーキについては重たさを隠しきれていない。

強めにブレーキを踏むと、重さを受け止めきれずに制動距離が伸びていく感触がある。

ブレーキが不安な道路状況では車間距離は広めに取って、ペースもいつもより控えめに行こう。

しかしノーズダイブしてリアのショックアブソーバーが伸びるというようなことはない、落ち着いた減速姿勢だ。

ワンペダルモードを使う際は、アクセルを離してからブレーキが効いていくまでにかなり独特の間がある。

乗り心地

私の乗った個体はタイヤの空気圧が3.1bar = 約310kpaとなっていた。

タイヤサイズも「255/40R20」と薄め&ホイール大きめだ。

この空気圧によるものもあるのだが、思っていた以上に乗り心地がよろしくない。

アシをストロークさせていく動き自体はあるのだが、段差の衝撃ですぐに吹っ飛ばされてしまう。

空気圧とスピードレンジの高さによるダブルパンチで、街乗りでは体がゆっさゆっさと揺さぶられることも少なくない。

100km/h以上のそこそこなペースで高速道路などの周期的に衝撃が入る路面を通過するような場面では乗り心地が適正化される。

段差を超えてもフレームはそのまま直進し、足回りの上下だけで入力を片付けるあの動きが出てくれる。

しかしサスペンションだけでは受け止めきれずに衝撃がボディーに入ってくることが多く、その度に車体と体がゆっさゆっさと揺さぶられてしまう。

常に上下に揺れているようで、ゆったり流すような快適な乗り味とは言えない。

また段差を越えた際の四輪が別々に暴れ出すような動きも気になってしまう。

これはハンドリングの項目でも語ったが、段差を越えた後にタイヤホイールの一輪一輪が別々の方向に向かおうとするような、ボディーが別々のタイヤに引っ張られて特定の方向に瞬間的に傾くような、そんな動きがあって落ち着かないと感じてしまった。

諸元・グレード・価格など

私が乗っていくのは2023年式のモデルYロングレンジだ。

🧭 モデルYのグレード構成(日本仕様)

グレード名駆動方式航続距離(WLTC)0-100km/h加速特徴
RWD後輪駆動約507 km約6.9秒エントリーモデル、価格重視
Long Range AWD全輪駆動約605 km約5.0秒航続距離と走行性能のバランス
Performance全輪駆動約595 km約3.7秒高性能仕様、スポーツ志向

テスラ モデルY ロングレンジ 諸元表

項目仕様
駆動方式デュアルモーター全輪駆動(AWD)
航続距離(WLTCモード)605 km
0-100 km/h加速5.0秒
最大出力444馬力/590Nm
バッテリー容量82.1kWh
全長4,750 mm
全幅1,920 mm
全高1,624 mm
ホイールベース2,890 mm
最小回転半径約 6 m
車両重量約1,979 kg
乗車定員5名(オプションで7人乗りも可能)
タイヤサイズ19インチ(標準) / 20インチ(オプション)
価格(新車時)約6,760,600円(オプション別)

まとめ

驚愕・恐速の加速性能だが、過剰なインチアップのせいか高すぎる空気圧のせいか乗り心地が硬すぎる。

また足回りのバタつきも気になってしまった。

タイトルとURLをコピーしました