冒頭のまとめ
高速道路を長距離快適・安全に速く走りたいならドイツ車の中でもアウディしかないと思わされた。
バスっと入った遮音によりどの速度域でも静粛性は高く、しなやかに動く足回りがどの速度域でも快適性を維持する。
乗り物の直進性や安定性も高く、どの速度域でも快適で安定だ。
エンジンは加速性能のわりに異様なほど燃費がよい。
しかしアラウンドビューモニターのシステムや車体サイズや操作系に微妙に扱いづらいところがあったり、内装がフォルクスワーゲン寄りのさっぱりとしたものとなっていたり。
癒しと快適のステーションワゴンだ。
外観
このA4アバントは市販車最高峰のスタイリングを持っている。
スッキリとしていて上品で、ヘッドライトは先進的でカッコよい。




ちなみにこのクルマのドアノブは上から下ではなく、なぜから下から上に持ち上げるようにして開ける。
操作方向がどう考えても逆である。
すぐに慣れるが、購入検討者はファーストコンタクトで「なに考えてるんだ」という第一印象となる。
内装
全体的にスッキリとしており、寂しい印象を受けることもあるかもしれない。

失礼ながら、どこかフォルクスワーゲンっぽい雰囲気が漂っている。
残念なことにステアリングはレザーでは無い。

指に吸い付くような感触は味わえない。
ステアリングのボタンも奥まった位置にあり押しづらいことがある。

ナビ内に地図を出す機能がある。
タッチ式のナビはスマートだ。この後の道案内や目的地までの距離、到着時間などを分かりやすく表示してくれる。スピードを出していても気を散らすことなく必要な情報を得られるように考えられているようだ。

モードセレクターも感触が鈍い。

表面を撫でるだけで反応するエアコン操作系はクール。

シフターはガバガバなのが少し気になる。

全体的に現行のフォルクスワーゲンとアウディは内装のさっぱり感がテスラに似ているが、このA4のドアを閉める用のハンドルは完全にテスラと一緒。一瞬モデル3に乗っているのかと思った。

クルコンのスティックはリミッターモードとの兼用のため慣れるまではややこしい。

右側のスティックは前後のワイパーをコントロールする。
間欠作動モードが無く、オートのみしか選べないため微妙な小雨の際にストレスを受ける場合がある。

左はウインカーだが、先端のボタンがステアアシスト・レーンキープの操作となっているのが新鮮だ。

押すとはみ出しを防ぐ程度の弱モードと、自動ステアの強モードを切り替え。
長押しで全オフできる。右奥のパネルやメニューの奥深くに配置するメーカーもあるなかで、ワンタッチで切り替えられるこの設計は賢い。
静粛性とオーディオ
アウディは静粛性の高さも魅力だ。
外で暴走族がたむろっていても、車内ではハエの羽音は聞こえてこない。
出しているスピードの割に静か。
サイドガラスは2枚でフロントガラスもコンコンと叩いた際の音が重い。
フロアの遮音もバシッとやってあるようで、世界を一個隔てたような静けさがある。
オーディオについてもレベルが高い。
イコライザー設定後ではあるが、
高音が大音量でも綺麗に鳴り、低音に叩かれる感触もある。
ツイーターのあたりからボーカルの高音が効果的に鳴っている。
低音は車両の下側で鳴らし、人間のコーラスのような高音は車体の上側で鳴らしている印象。
実走行インプレッション
取り回し
微妙に小さくないサイズ感で、メルセデスのCクラスやBMWの3シリーズよりは少しだけ大きい。
しかし慣れれば普通に乗れる。
取り回し・サイズ感をギリギリ許容範囲内に抑えつつ、優れた走行安定性と快適な車内空間を両立している。
クリーピングがないのと、クラッチが繋がった直後あたりで少々乱暴に前に出るような動きがあるため、狭いところでは慎重にペダルを操作しよう。

アラウンドビューカメラやクリアランスソナーがポンコツで、逆に感覚が狂ったり気が散らされてしまう。
後退中に子供が走り込んでこないか程度の確認に留めて、自分の運転感覚で操作したほうが逆に確実そうだと感じるレベル。
バックカメラは過剰に広角なので後方との距離感がわからない。
「当たった」と思ったところから30センチほど下がったところが適正値。
前後には少々長いため、キッチリ下がらないと前にはみ出して他車の迷惑になる上に当て逃げを食らうリスクも上がる。駐車は丁寧に行こう。
ハンドリング
実はエンジンはフロントミッドではない。

旋回性よりは安定性を優先しているセットアップなのだ。
ハンドルを切った後に一呼吸おいてから曲がっていき始める。
ノーズの軽さと強靭なシャシーを活かした過激なコーナリングを魅せる車種が多い中では落ち着いている印象だ。
雪道で唐突にスピンしていったり、雨の日のハイドロプレーニングや段差のジャンプ後に姿勢を大きく乱されて事故りかけるような事態が起きないようにしている印象。
そこそこ大きめにロールさせて傾きを収束したら、その大きめな傾きの中でワっと曲がっていく。

動きは大きく、少し重ためで旋回性よりは安定性重視。
どちらかと言えば車が曲がっていきたがらないような動き。
しかし、一部の車種でありがちな乗り物が旋回を拒否するような特性ではないため、ワインディングを走っていても不快感はない。
アクセルオフや荷重移動でスッと曲げさせるような気持ちよさもほとんどないが…
ハンドルを切れば切っただけただ車が切れ込んでいく。
道に合わせてハンドルを切っていくと。自然とスムーズに抜けられるように味付けされてる。
万人が安全かつ確実に走るためのセットアップであり、自分で荷重コントロールやタイヤグリップ管理をしていく系では無い。
いろは坂の上り・下りの両方を元気よく走ったが、特に問題なく快走することができた。
万人が無難に安全に乗れる。
あくまで普通であり、スポーツセダンのような過激だかクイックな脅威のコーナリングも、安定性最重視のつまらないクルマのようなダルさもない中間。
乗り心地
アシのストロークで揺れをしっかりいなす最高峰のサスペンション。
スピードメーターが300km/hまで切っているクルマだとは到底思えない快適性だ。
コトッと動いただけで揺れを吸収し、ボディーにほとんど衝撃を入れてこない。
そのおかげで身体が揺さぶられない。
安定性重視であるダイナミックモードでも、ギチギチに締めずにアシをしなやかに動かす快適性を残す。
詳細は超高速域のパートで話すが、このしなやかに動くサスペンションが極上の走行安定性をもたらしている。
コンフォートモードだと少々上下に動き過ぎるところがあるため、中間のモードが一番バランスが良い
パワートレイン
燃費性能と加速力のバランスが非常に良いディーゼルを搭載。
踏めば十二分にトルクが出てくるが、穏やかに走っていれば燃費が格段に良い。

ディーゼルは燃料代も安い。
高回転域へ向かうブン周りや気持ちよく響いてくるエンジン音、加速性能などはレギュラー・ハイオク車と比べてもまったく劣らないものを持っている。
ディーゼルエンジンゆえのガラガラ音も、持ち前の遮音性のおかげでほぼ聞こえてこない。
エンジンを掛けたままでも快適に眠れるだろう。
低速から踏むとかなりのトルクで押し出される。
上り坂でも低回転からでもかなりの加速。
ディーゼルらしく最大トルクがずーっと持続するような伸び方をするぞ。
個人的な不満点として、アクセルを踏み込んだ際の加速のガタつきが気になる。
踏みはじめは今のギアのトルクで粘ろうとするが、都内を走っているとこの程度の加速では足りない。
例えば瞬間的にズドンとアクセルを踏んで、数十km/h足して隣のレーンに合流しなければならない場面。
強めに踏んでも加速が遅いため、しびれを切らしてドカンと踏む。
するとキックダウンと共に突然400Nmの最大トルクが出て吹っ飛ぶように加速していくため、危ないし怖いし、アクセス開度に対する加速力の出方がリニアではない。
いっそのこと交通の激しい場面ではスポーツモードで走ったほうが良いレベル。
トヨタ系のハイブリッドのほうがよっぽど滑らかで走りやすい。
踏み込んだ際の加速力はそこそこあるが所詮は200馬力程度。
高速道路を飛ばすにはもう一声欲しいと感じる。
しかし左レーンから抜いたり、圧倒的な安定性の中でじわじわとスピードを乗せることには何も問題が無い。
たまに気持ちよく流す程度なら経済性的にもこれがベストだろうが、120km/h制限区間を3レーン使い切って飛ばすようなユーザーならS4を買いたいところ。
燃費関連
このエンジンは燃費性能が異様に高い。
高速道路をずっと80km/hで走ったところ、あと少しでリッター30kmを目指せるくらいの数値が出た。

高速道路をカッ飛ばしていても、走行ペースの割には不満の無い燃費が出ている。
マイルドハイブリッドか搭載されるが、加速においても減速においても体感はできない。
瞬間燃費系を表示させると、減速時にチャージ側にバーが伸びるのを確認できる程度。
下り坂でアクセルをオフにしていると、走行中でもクラッチを切ってエンジンを切る。
ブレーキはちょっとでも乱暴に踏むとズドンとなってしまうため、快適に乗ろうと思うとかなり気を遣うことになる。
アイドリングストップはブレーキペダルを離してから再始動までにラグがあり、アクセルを踏むと2000回転程度まで上げてからじわーっとクラッチを繋げていくような動作となる。
超高速域
スピードの世界観が全く違う。

オールクリアな条件下でアクセルをじわーっと踏み続けていると、知らぬ間に200km/h近いスピードが出る。
その割には車内は静かで乗り心地も快適。ハンドルが揺さぶられることもない。
まず静粛性が非常に高く、出しているスピードの割に車内はたいへん静かで快適な環境が保たれる。
それに加えて快適性が異様に高い。
路面がうねっているところを超高速で通過しても、足回りがコトッと動くだけで車体が全く揺さぶられない。
アウディ車の高速安定性は次元が違うのだ。
空力特性も素晴らしく、「いまちょっと風に振られてた??いや、気のせいか・・・?」となんとなく感じるかもしれない程度。
ハンドルも全くブレず、車体も路面に吸い付く。
超高速走行中は、ハンドルを動かし始めた領域はほとんど反応しないためゆったりと走れる。
ある程度の曲げてからキープすると、ワンテンポ遅れてから車の向きが変わり始める。
動きが穏やかなので安心して操作していける。
段差で飛び上がる際はワンテンポ遅れて車体を持ち上げ、飛びすぎないようにしつつアシのストロークで路面を掴みながら、四輪をしっかり動かして接地性を維持する。
アシの上下で衝撃吸収も行い、車体はガタつかせずに滑らかに突き進んで行く。
逆に猛スピードで段差を飛び降りるように射出される場面では、足回りがしっかりと伸び着地後も車体に衝撃が直に伝わらなように受け止め、受け流していく。
穏やかに走ってても飛ばしていても、アシのクッションで快適な乗り心地が保たれるのだ。
スペック・グレード・価格など
いま現在、A4はアウディ社の公式サイトには載っていない。

Audi A4 系列の比較表
モデル | ボディタイプ | エンジン | 駆動方式 | 出力 | 特徴 |
---|---|---|---|---|---|
A4 35 TFSI | セダン / アバント | 2.0L直4ターボ (ガソリン) | FF | 150PS | エントリーモデル。燃費重視。 |
A4 40 TFSI quattro | セダン / アバント | 2.0L直4ターボ (ガソリン) | 4WD | 204PS | パワーと走行安定性のバランス。 |
A4 40 TDI quattro | アバントのみ | 2.0L直4ディーゼルターボ | 4WD | 204PS | 高トルク・低燃費のディーゼル。 |
S4 | セダン / アバント | 3.0L V6ターボ | 4WD | 354PS | 高性能スポーツ仕様。スポーティな内外装。 |
RS4 Avant | アバントのみ | 2.9L V6ツインターボ | 4WD | 450PS | トップグレード。ハイパフォーマンスモデル。 |
S line との関係
- S line はA4の外観・内装をスポーティにするパッケージ。
- ただしエンジン性能はノーマルA4と同じ。
- S4はS lineより上位で、エンジンが高性能版。
- RS4はさらに上の最上位モデルで、完全に別カテゴリー。
こんな人におすすめ
モデル | おすすめユーザー |
---|---|
A4 35 TFSI | 価格重視、街乗りメイン |
A4 40 TFSI | 走行性能も欲しいけど燃費も重視 |
A4 40 TDI | ロングドライブ・ディーゼル好き |
S4 | 高性能&実用性重視のスポーツカー |
RS4 Avant | 走りと実用性を両立したスーパーワゴン |
ポイントまとめ
- A4=ベースモデル
- S4=スポーツグレード
- RS4=ハイパフォーマンスモデル
- S lineは見た目がスポーツ風になるだけで、性能はA4と同じ
- RS4はアバント(ワゴン)専用モデル
まとめ

快適に高速道路を長時間走れるクルマを選ぶなら、間違いなくアウディだ。
バスっと入った遮音による静かさ、しなやかにストロークして揺れを吸収するアシがもたらす快適なのに安定する乗り味。
美しい外観には惚れるし、スピードを上げればその性能を味わえる。ゆっくり走っていても気持ちが良い。
私は超高速でも余裕で走れるが実用域の乗り心地が不快すぎるGT-R系の調本格派スポーツカーより、リラックスしてコーヒーを伸びながら高速道路をかなりのペースで流しても、快適で穏やかに静かに走るアウディを選びたい。
ーーーーーーーーーーーーーーーー不満(short動画用)ーーーーー
ハンドルのスイッチが押しづらい
長押ししないとシートメモリーが戻らない
クルコンが使いづらい
ワイパーの間欠作動がない。オートでは足りないことも。
夜間の停車中にデイライトが切れない