サーブ(SAAB)の栄光と終焉:スカニアとの合併、EV開発、そして完全消滅までの歴史をサクッと解説

スウェーデン発の名門メーカー「サーブ(SAAB)」。その名を聞くと、航空機を連想する人もいれば、個性的な乗用車を思い浮かべる人もいるでしょう。

この記事では、かつてトラックメーカーのスカニアと合併していた時代から、経営破綻、EV開発、そして完全消滅に至るまでのサーブの激動の歴史を整理します。


航空機メーカーから始まったサーブの挑戦

1937年、サーブ(SAAB)はスウェーデンの航空機メーカーとして誕生しました。第二次世界大戦後には民生転換の一環として、乗用車の製造も開始。
航空機の技術思想を取り入れた独自設計で、安全性や操作性に優れた車を生み出していきます。


スカニアとの合併:「Saab-Scania」の時代(1969〜1995)

1969年、サーブはトラック・バスメーカーの「スカニア・ヴァビス(Scania-Vabis)」と合併し、「Saab-Scania AB」が誕生します。


これにより、航空機・乗用車・トラック・軍需産業と多角的な事業を持つ、スウェーデン屈指の総合輸送・防衛企業となりました。

この時代のサーブは、まさに「空も陸も支配する」存在だったのです。


解体と分社:スカニアとサーブの分離(1995年)

1995年、投資会社Investor ABの主導で「Saab-Scania AB」は解体され、両社は別々の企業体へと分離。

  • スカニア(Scania AB):トラック・バス部門として独立。後にフォルクスワーゲングループ(VW傘下のTraton)へ。
  • サーブ・オートモービル(Saab Automobile AB):自動車部門は独立後、米GMが段階的に買収。

これにより、スカニアとサーブは完全に別の道を歩むことになりました


サーブの自動車事業:GM傘下での迷走と失速

2000年にGMがサーブを完全買収し、グローバル戦略の一環として再構築を図ります。
しかしプラットフォームの共通化により「サーブらしさ」が失われ、販売台数も伸び悩みます。

モデルチェンジの遅れ、ライバルとの競争激化、リーマンショック後の経済低迷が重なり、サーブは資金難に陥ります。


経営破綻とNEVSによる買収(2011〜)

2011年12月、サーブ・オートモービルはついに破産を申請。
その後、中国・スウェーデン資本のNEVS(National Electric Vehicle Sweden)がブランドと資産を買収し、電気自動車(EV)の開発に乗り出します。

NEVSは「Saab 9‑3 EV」や後年の「Emily GT」といったEV試作車を開発しますが、資金難や親会社Evergrandeの経営悪化が直撃。生産はわずかにとどまりました。


そして完全消滅へ:NEVSの活動停止(2024年)

NEVSは2023年以降、工場閉鎖と大規模レイオフを実施し、「ハイバネーション(冬眠)」モードへ。
さらに2024年にはEV Electra社との提携も破談し、ついにすべての開発活動が停止
正式な破産申請こそなかったものの、実質的にサーブの自動車ブランドはこの時点で完全に消滅しました。


付録:サーブの変革をまとめた年表

時期状況
1937年サーブ(SAAB)創業。航空機メーカーとしてスタート。
1940年代後半〜乗用車事業に参入。
1969年スカニアと合併し、Saab-Scania ABが発足。
1995年Saab-Scania解体。スカニアは独立、後にVW傘下へ。
2011年販売不振と資金難でサーブ・オートモービル破産。
2012年〜2023年NEVSがEV事業を継承。Emily GTなどを開発。
2024年事実上の清算。サーブ自動車ブランドは完全消滅。
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