【iX3】EVでも感じるBMWらしさはコレ。EV版のX3はiX5の名で売れる仕上がり【試乗インプレッション】#120台目

冒頭のまとめ

サイズ・価格・質感・走行性能のすべてのレベルは高く、「これiX5で売れたやろ」と思った。

1890mmというデカさは”3″のサイズ感ではないし、内外装や走行フィールも”3″なんてレベルではない。

デカいが箱型ボディーと視点の高さで運転性は良好。

乗り心地も良く、G型BMWでよくある跳ねてしまう動きはかなり抑えられている。

微振動も衝撃もしっかりと受け止めるダンパーが入った。

加速性能はかなりのもので、2トン越えの重量級ボディーを軽やかに加速させる。

スピードを出してもその加速力は衰えず、むしろガソリンエンジンのような伸びを超高速域で魅せる。

ハンドリングもあえて前後のフラット&ニュートラル加減を崩してFRっぽさを演出しているようで、そこはかとなくフロントミッドFRを好むBMWらしい動きが感じ取れる。

しかし重量が足を引っ張り狭い峠道では無理が効かない。フェラーリのGTC4ルッソに峠の登りでフッツーに離されて負けた。

気持ち悪いくらい高い遮音性とハーマンカートンシステムによる清らかな音響。

外観・デザイン

グリルやヘッドライトのデザインは比較的シンプルだが、車体サイズが大きめなのでそこそこの圧迫感がある。

こっちが現行のX3.

一世代前のほうのX3も載せておこう。

外側へと角ばってはみ出していくような、かなり独特な形状のテールランプをしている。

これが初見では相当に特異なものと感じるが、見慣れると車体を大きく見せてくれる上に大きなアクセントとなって悪くない。

相当な見栄張り、虚栄心すら感じるような出っ張りであるが…

こっちが現行のX3のほうのリア。こちらも相当に独創的である。

ひとつ前のほう。iX3はこっちの方をベースに作られているのがよくわかる。

直線をパキパキと折ったバンパー下部。ちょっとデザインが過剰な気はする。素材もプラスチックでピアノブラックが丸出し。

押し込むとギシギシする。

プラスチックと直線で形を作った感が否めない。

ホイールは純正らしく凝った造り。銀メッキも入って派手な形状だがデザイン的には浮いていない。

アンダーボディーはツルツル。スピードを出しても全く風には振られないぞ。

ボンネット収納はない。三角表示板や充電ケーブルだけでも入れておけると助ったんだが…

グリル部分は安っぽいプラスチックで形だけ作っているが、遠くから見ると気にならないので問題ない。

近くから見ると派手で結構凝っているが、遠くから見る程度だとシンプルなフツーのBMWのSUVにも見える。

内装・デザイン

この世代のBMWの内装は最高だ。

使い勝手が最高に良い現代のUIに加え、まだ物理ボタンも残っている。

質感も驚くほど高く、あちこちにレザーやソフトパッド素材が採用されており安っぽさもほぼ感じない。

ステアリングホイールやインフォディスプレイのUI、エアコンのボタン類など、内装の構成要素のすべてが使い勝手にもデザイン性にも質感にも優れている。

総合的に見れば約900万円という新車価格がむしろお買い得だと思えてくるほどに良い。

ケチな話だが、中古で妥協すればもっとお買い得になる。

ナビも多機能。

ちなみにこのiX3はバッテリー残量がいま何%か表示してくれないという欠陥を持つ。

あるのは程々に残量を目測できるメーターと、アテになるのか分からない航続距離表示のみ。

いちおう電費を表示するモニター機能はあるから計算のしようがないわけではないし、バッテリー容量は80kwhもあって500kmくらいは普通に走れるのでピリピリする必要はないが…

静粛性とハーマンカートンのオーディオシステム

ハーマンカートンのオーディオシステムは素晴らしい。

一言で言うなら音が清らかなのだ。

車全体に音が響き渡るように鳴る。

音楽を構成する要素全てが鳴っているかのよう。音色にもよどみがない。

車内の箱形空間を全部使って、ありとあらゆる方向に音を飛ばして鳴らしている。

低音もほどよくドンドンと強調することができて好みのバランスを作れる。

車の中で美しい音を響かせるために、各所に設置されたスピーカーからうまく音を鳴らしている。その設定が完璧に行われているようだ。

これに似た鳴らし方をする設定はメルセデスにもあるが、あちらには多少の鳴らしてます感がある。

こちらは清らかに鳴り響く。

音量を上げても、女性ボーカルの高音がボヤけるような感じもない

イコライザーでいちいち調整する必要もないレベルどころか、いつも通りにイコライザーを設定したら清らかな音が損なわれてしまった。

ハーマンカートンだけはイコライザー設定をイジらないほうが良いレベルで純正状態で完成されている。

ちなみにAピラーのツイーターの建て付けはガバガバ。

遮音性についても恐ろしいほどのものを持っており、床下のザーザー、路面のゴーと言うロードノイズも、風切り音も全く入ってこない。

50キロ程度で流しているうちは、路面状況さえ良ければほぼ無音とすら言えてしまうほど車内が静か。

この静粛性の高さはEVでしか出せないと感じるほど。

余談:何をどうやってもETCがエラーになるときの対処法

BMWのETCユニットはミラーに付いているわけだが、私が乗った個体は何回差し込んでもエラーが起きた。

そこで渾身の力でカードを奥まで押し込んでホールドするという力業を実行。

カードをスキャンする数秒間だけ押し続けたところ、なぜか分からないが読み取りに成功した。

なおICチップは手前側である。

それでも解決しなかったら現金で乗るしかない。

実走行インプレッション

取り回し

サイズ自体はデカいが、綺麗な箱型を高いところから見下ろす形になるので意外と運転性は悪くない。

しかし1890mmもある横幅では道路がミッチミチ。

視界性能とカメラアシストで強引に”3″のサイズ感に留まろうとしているが、日本で乗る車としては1890mmはもう特大車である。

ちゃんとした車線があるところでもミッチミチなのに、センターラインが無いような狭い道で対向車が来たらどうするんだろう…

アラウンドビューモニター機能が非常に優秀なので、駐車は基本的にアラウンドビューモニターを見ながら合わせ込んでいくだけのゲームになる。

スタート位置さえミスらなければ毎回イッパツで決まる。

パワートレイン

車重は2.2トンだが、モーター出力は286馬力/400Nmもある。

軽やかに踏むだけで十二分のスピードが乗るし、奥まで踏むとテスラ並みの加速をふわっと軽やかに魅せてしていく。

30キロ位は一瞬でポンと乗るような加速。

肉体が大きく抑えつけられ驚かされる。正直怖いくらいだ。

恐ろしいほど速いが、滑る感じはなく割とそこらじゅうで踏んでいける。

慣れるとこの加速でも並みに感じてしまうし、実際300馬力程度は普通なのがEVの世界。

1つ不満なのはパドルシフトが無いことだ。

Dレンジからもう一回下げるとBレンジになるが、これでは回数ブレーキの効きが強すぎて少しアクセルを離すだけでガツンとブレーキが効いてしまい、少々使いづらい。

Bレンジの回生力は強すぎるため、下り坂でもアクセルを踏まないといけないのだ。

これでは長旅の時に右足が疲れてしまう。

この中間が欲しい。

本体設定から回生力を変えられるが、かなり階層が深いところにメニューがあるためアクセス性は悪い。

数字のショートカットボタンに登録できるため、スッと設定を呼び出せるのがまだマシなところ。

クルーズコントロールは非常に頼もしく。自動運転と言って良いレベルでハンドルをとっていってくれる。

ワンタッチでハンドルアシストの有無を切り替える機能もある。

ボタン数は多いが多機能かつ高性能で、現行型よりも使い勝手が良いかもしれない。

クルマにハンドルを操作させたいとき、ハンドル操作くらいは自分でやりたいとき、ワンタッチで切り替わるため人間の操作を機械に妨害されない。

ちょっとでもレーンをはみ出しそうになると勝手にハンドルを取ってくる迷惑なシステムが多い中で、この世代のBMWはハザード横のボタンからワンタッチで逸脱システムを切ることもできる。

このあたりの使い勝手は物理ボタンが残っている世代ならではのもの。

現行型はデカい画面の中にすべて取り込まれてしまったため、この頃のBMWが最もよかったのかもしれない。

乗り心地

ダンパーのストロークだけで揺れや微振動をコトっと吸収してくれるため、乗り心地はかなり良い。

穴ぼこに落ちるような状況でも、ダンパーの動きだけで揺れの大半を吸収するため大きな衝撃が車体に入ってこない。

一定以上の衝撃を受ければゴツゴツと来るが、角は完全に取れており不快感は無い。

走行安定性や走りのしっかり感を出しつつも、乗り心地は良好に保たれる。

ハンドリング・ドライバビリティ

この車はハンドルの重さをスポーツモードとコンフォートモードの二段階で切り替えられるが、スポーツモードのほうは重たすぎて使い物にならない。

ハンドル切っても車が曲がっていかないと感じるレベルの重さであり、曲がりめがむちゃくちゃ重くなる。

切り込んでいくと普通なのだが、個人的にはこの重さが合わずにINDIVISUAL設定でステアリングのみコンフォートを指定した。

ハンドリング性能は全体的に優秀だが、追い込んでいくと不満が出てくる。

ハンドルの切り始めからクセのないスムーズな追従性を発揮する。

見かけほどの重たさはなく動きは滑らか。

タイヤグリップと重量バランスでスムーズに曲がっていくため安心感がある。

重量配分がフラットなEVでは珍しく、前がガっと入ってからリアが穏やかについていくようなFRっぽい動きをしている。

前と後のタイヤで別々の動きをしていくような旋回・加速フィールだ。

ただのEV版のSUVではなくて、わざとbmwのFRらしいハンドリング特性になるように作っているのだろう。

グラっと来そうなような急ハンドルの切り方をしても怖い感触はほとんどない。安定した姿勢で走ってくれている。

しかしブレーキングからのターンインでは重さが足を引っ張る。

ただ重いだけでなく、腰高なSUVである点がさらに飛び込みの限界を下げる。

タイヤの踏ん張りも結構なものだが、旋回中は常に重さに引っ張られてコーナリングスピードを上げられない。

コーナリング中の動きは非常に安定しているが、立ち上がりで強い加速を与えるとあやふやな動きをしだす。

これがただの4WDのEVであったなら、モーターのトルクに負けてアウトへ飛んでいこうとするシンプルな動きになる。

しかしこのiX3は後輪駆動だ。

旋回が行われている最中にリアのタイヤにのみ前後方向の加速力を与えると、フロントタイヤがまだまだ切れ込んで曲がって行こうとする動きと、遠心力でアウトに飛ぼうとする動きがバッティングするような感じになる。

この結果アンダーステアでアウトに膨らんで行くのか、FR特有のフロントタイヤの余裕でさらにインに切り込んでいくのか、よくわからないようなチグハグな状態での加速となり不安感が大きくなる。

乗り手がはっきりと「いまは膨らんでもいいから全開加速に集中するんだ」と外側に行くか、「まだフロントタイヤには余裕があるんだから、加速はさせるけどフロントタイヤの限界でさらにコーナリングするんだ」と内側を目指すか。

ハッキリと腹を決めて走っていくとイイだろう。

旋回中に中途半端に強く加速しようとするとフワつく。危険と言うほどではないが。

しかし、この不満を述べるようなユーザーは最初からSUVなんて検討していないだろうというレベルには仕上がっている。

ちなみに旋回中に段差を越えてもほんのちょっとだけことっとハンドルが振動する程度。

足回りのブッシュ類の動きだけで、姿勢の乱れに繋がるヨコ方向への衝撃も吸収している印象がある。

限界領域での応答性が抜群なトヨタ系のSUVと比べるとまだ詰めは甘いが、段差を越えるたびにハンドルが暴れていたX1とは大きな違いである。

超高速域

EVの中には300馬力近いパワーを持ちながら、100km/hから上で加速が鈍り始める車種がある。

しかし本車はそんな事はなく、スピードメーターの上限まで軽やかに伸び続ける。

高回転域に向かうにつれて気持ちよさを増していくような、ガソリンエンジンのようなトルク特性だと感じてしまうほど。

直進安定性はストレートではべらぼうに高いが、段差を超えるとハンドルが暴れがちになる。

G型BMWの中ではかなりマシな部類だが、個人的には跳ねて路面から離れるような足回りではなく、伸ばして路面を掴みつつ、快適性も出して欲しいところ。

静粛性はかなり高く、スピードの割に風切り音は全然しない。

乗り物自身も全く風に揺さぶられない。矢のように突き進んでいく安定性を持つ。

スピードの乗りも良い。

新時代の到来を感じるような軽やかな走り心地であり、他のEVとはまるっきり伸び方が違う印象を受けた。

「EVなんてどれも一緒で個性がない」という声をよく聞くが、iX3は反論に持ち出せる。

モーターの特性もハンドリング性能も、BMWらしさが感じ取れるのだ。

試乗車のスぺックなど

新車価格約860万円。

iX3はMスポーツのみ。

および BMW公式 iX3 紹介ページ

項目仕様
全長4,740 mm
全幅1,890 mm
全高1,670 mm
ホイールベース2,865 mm
車両重量2,200 kg
車両総重量2,475 kg
最高出力210 kW(286 PS)@6,000 rpm
最大トルク400 Nm (0–4,500 rpm)
0–100 km/h加速約 6.8 秒
一充電走行距離
(WLTCモード)
約 460–517 km ※
電力消費率
(WLTCモード)
162 Wh/km = 6.17km/kWh
充電能力
(高出力急速充電)
10 分→約 90–100 km走行分
※日本仕様(国土交通省・WLTCモード)で446~517 km、欧州WLTPでは460 km

横幅が1890mmもあること、後輪駆動であること、286馬力あること、車重が2.2トンあることなどが注目点だ。

まとめ

以前乗ったガソリン車の方のX1のMスポーツには、急ハンドルでグラついたり段差でハンドルが暴れるような不穏な動きがあった。

しかしiX3では走りに関する弱点はほとんど気にならないレベルとなっており、これ以上を求めるユーザーは最初からセダンタイプ買ってるよねと言えるようになった。

圧倒的な内外装の質感と軽やかな走行性能が最高のドライブを提供してくれる。

おかげさまで思い出に残る旅ができた。

余談:iX3はむっちゃ譲られるので威張りたい人にはお勧めです

余談だが、このクルマに乗っているとむちゃくちゃ譲られる

私はゆっくり走るクルマに追いついた際、車間距離を詰めたり、パッシングしたりウインカーを出したりするような、攻撃的なアクションは一切起こさない

オートライトの動作次第だが、昼間点灯くらいはしてたかもしれない。

状況の良い白点線まで民度よく待ってから抜く程度だ。

このiX3の試乗においても、他者を圧迫するような運転は一切していない

それなのに何回も何回も他のクルマに譲られた

巨体とイカついフェイス、EVゆえの走行ペースの速さが周りのドライバーをどかすのかもしれない。

威張りたい人間にはうってつけのSUVである。

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