【フィット】CVTに魅力を殺されたVTEC【試乗インプレッション】#113台目

走行距離15.8万kmの2011年式のフィットのカーシェアを見かけたので、とある悪魔のフィットの伝説を確かめるために試乗してきた。

例の動画シリーズ

冒頭のまとめ

軽さとエンジンの刺激自体はあるが、例のグランツーリスモの動画シリーズのような速さや走行性能はは流石に無い。

エンジンはVTECの名に恥じぬブン回りを見せるがポンコツCVTに魅力を殺されており、踏んでもゴムのようにビヨーンと伸びてしまって気持ちよさがない。

そもそもの馬力も無いのであまり加速していかない。

ハンドリングはロールの大きさゆえスポーティーさが無いが、素直な動きを見せる。

ロールが収まったら前下がりの旋回姿勢を維持。

外観・デザイン

ありきたりな車ではあるが、三角形主体の男女問わず馴染める良いデザインだ。

スポーティーなイメージも持たされている。

赤色である弊害か、ボンネットやルーフのクリアが剥がれて悲惨なことになっているが…

ボンネットやテールゲートにアルミが採用されており、手で触れてると明らかに軽い。

おそらく燃費のためだが、限られた新車価格の中で頑張っている。

内装

価格帯ゆえ構成要素の大半が樹脂だが、なぜか安っぽさは感じない。

むしろ車内の雰囲気はCR-Zに似ている。

マニュアルエアコンだが、ダイヤル内部の電球が切れたのか最初から付いていないのか、夜間には何も見えない。

温度は適当に回すだけなので問題ないが、曇り取りが必要になった際に見つからなかったらまずいのでは…

普段ならグワッと右端まで回し切らないとアクセスできないのが憎たらしい曇り取りだが、このクルマでは有難く感じた。曇り取りの位置だけ強制的に外気を取り込むのだろうか…

シフトはストレート式のCVT.

SレンジとLレンジの使い勝手が意外とよく、日産のe-power車のBレンジ感覚で使える。

ブレーキパッドの摩耗や下り坂での加速防止に役立つ。

ボタンを押さずに引くとSで止まる上に、ギア同士には節度感があるため入れ間違うことは無さそうだ。

静粛性とオーディオ

カーナビは付いているが、bluetoothには対応していない。USBで繋ぐ必要がある。

静粛性は並み。フロアに遮音材が入っているのは感じるが高速道路では風切り音が大きめ。

価格を考えたら不満はない。

スピーカーの方は実用上は充分で音量がしっかり出る。

低音もドンドンと叩きつけるように鳴る。

人間の歌声の領域がボヤけて聞こえづらい感じは否めない。

実走行インプレッション

取り回し

文句なしの乗りやすさ。

車体が小さいため普通ならまずやらないようなところでも簡単にUターンができるし、後方視界も抜群で見落としは起こり得ない。

つい最近逆走車がこのフィットから出たばかりだが…

ちなみに大判なフロントガラスや細いピラーが抜群の周辺視界を提供してくれるが、角度自体はそこそこ寝ているため前との距離感が少々掴みづらい。

全長が短いため無理に前寄せしなくても駐車マスには収まる。

パワートレイン

昔を思い出す古典的なガソリンエンジン。

エアコンをつけて停車していれば一定間隔でコンプレッサーの「んむうぉ~~~~↑↑」という音が鳴り響くし、アイドリングストップやマイルドハイブリッドの類も一切ない。

メーター内のインフォディスプレイも瞬間燃費計を出しておける程度。

パワートレインは基本的にエコ最優先の設計。

ECONモード使用時の空走能力が地味に高く、アクセルもブレーキも踏まずに惰性で流していてもほとんど減速していかない。平均燃費もリッター15kmほど出る。

停止してからの出足は軽さとcvtの味付けのおかげで問題ないが、ちょっとでも踏むと遅い。

交通の流れに乗るために瞬間的に速度を乗せたい場面でも遅れる。

高速道路に持ち込む。

Dレンジで踏み込むと高回転域までは行かないので、加速力が欲しい時は前もってSレンジかLレンジに入れておこう。

この3つのシフト位置は、感覚的には3速→2速→1速といった具合。

100km/h近く出ている状態でLレンジに落としても問題はない。

勝手にCVTが動いて回転数を高く保ってくれるぞ。

さすがはホンダのVTECエンジン。

VTECの名に恥じない気持ちの良いブン周り。

元気よく高回転域まで吹け上がる…と言いたいのだが、CVTに持ち前の魅力を殺されている節がある。

まず踏み込んでも「びよーん」とギア比が変わって行ってしまい、イマイチ回転数の高まりを感じられないのだ。

高回転域に向かって駆け上がっていくのではなくて、4000回転くらいからCVTのほうが回転数を落とすように動いてしまう。

ベタ踏みしてキープし続けると、徐々に高回転域まで使い始めるような特性。

せめて多段式トランスミッションか、ギア比を固定するマニュアルシフトモードでもあればエンジンを楽しめただろう。

これがCVTの乗り味なら、「ラバーフィール」と言われて嫌われるのも納得。

肝心の加速力については、99馬力という数値から想像できる通りだ。

市街地で前が開けた際に踏み込んでも全く加速していかない。

高速道路で踏み続けると速度は結構乗るが、このままずっと踏み続けてるとエンジンブローしそうだと思うくらいにブン回し続けないと高めの巡行スピードの維持ができない。

最低でも5AT+1.5リッターモデル(120馬力)のほうを選んで欲しい。

(ちなみにGグレードは4WDを選ぶと5ATになる。)

このモデルなら安いだろうし、みんなRSのマニュアルを選ぶだろうけど。

ハンドリング・ドライバビリティ

高速道路に合流していくカーブで驚いた。

「乗りやすい」と。

ハンドルを切って行くと何の雑味もなくスムーズに車が曲がって行く。

一体感という言葉を具現化したようなコーナリングで何も違和感を感じない.

遠心力でアウトに流される感じもなく、人間の操作に対する応答への違和感もない。

このスムーズなハンドリングには感心させられた。

スピードを出してみようと思ったが、14インチのスタッドレスのせいか直線で段差を斜め気味に超えただけでハンドルが持っていかれる。

これが怖くて無謀に踏み込むことができなかった。

ちなみに空力特性には結構優れているようで、スピードを出しても風に振られる感触はあまりない。

しかし、路面のうねりや左右がズレて通過するような段差にハンドルを持っていかれて姿勢を乱されるのでどのみち無理はできない。

クルコンどころかレーンキープ関連の機能すら付いていないので、長距離ドライブの際は注意が必要だろう。

さて峠道へと入って行くが、基本的に動き自体は素直である。

しかしスポーツ系のグレードではないためロールは非常に大きい。

強めにハンドルを揺さぶると倒れてしまいそうだと錯覚するほどロールする。

それだけロールは大きいが、乗り物の動き自体は落ち着いている。

ハンドルを切ってから動き出すまで間があるが、一旦ロールが収束すれば前下がりの安定した動きのまま曲がっていく。

人間が意図的に急ハンドルを繰り返してフラつかせない限りは安定を維持できる。

乗り心地

ちょうど年式や価格帯、セグメントがCR-Zと被るわりだが、個人的には足回りの動きにも近いところがあると感じた。

そんな本車の乗り心地を一言で言えばドッタンバッタン大騒ぎである。

乗り心地や走行フィールはもはや運試しのようなもので、状況における当たり外れが激しい。

断続的に衝撃が入る穴ボコ路面では、断続的に体が叩きつけられるような衝撃を受けることもある。

しかしアシをしっかりと動かして路面の段差や衝撃に合わせて行ってくれる。

最低限かつ必要充分な快適性がしっかり担保されている。

ただストロークするだけではなくて、うねった路面に四輪が別々に追従していくような「粘り」を感じるような一面もある。

特に旋回中にうねった路面を斜めに越えていくような場面では、ただ跳ねるようなことはなく、四輪の伸び縮みで路面を捉えて併せ込んで行くような粘り気のある足回りの動きを感じられる。

また、段差を乗り越えて高低差自体が生じたが、飛び上がったり叩きつけられるような衝撃の入り方はなかった場面では、程よく上下に車体を揺らしながら快適性を出しに行くような動きも見られた。

ダンパーの部分で受け止めきれる容量を超える衝撃を受けた際に、ドッタンバッタンと大騒ぎしだすようだ。

「安かろう悪かろう」と言えばそれまでであるが、自動車メーカーの純正ショックらしい乗り心地や走行性能のバランスを感じられる。私はそこそこ好きだ。

スペック・価格・グレード・年式など

車体番号を元に公式サイトで調べたところ、2011年式のG スマートセレクションであった。

新車価格は135万円だ。

スマートセレクションを選ぶと、スマートキーやHIDヘッドライト、ETCや後席のヘッドレストなどが装着されるらしい。

グーネットカタログの諸元ページ

🚗 2011年式 ホンダ フィット 各グレード比較表(新車価格+装備)

項目GG スマートセレクションLX(上級)RS(スポーツ)
新車価格(税込)約119万円約135万円約143万円約155万円約164万円
スマートキー×◎(標準装備)
ディスチャージライト×◎(HID)◎(専用デザイン)
ETC車載器×△(オプション)△(オプション)
LEDセンター照明×◎(専用装飾)
オートエアコン×(マニュアル)
ホイールスチール14インチスチール14インチアルミ14インチアルミ15インチアルミ15インチ(専用)
シート表皮標準布標準布上質布上質布+専用加飾スポーツ専用(黒系)
オーディオCDCDCD+USB対応HDDナビ(車種専用)CD+専用チューニング
足回り(サス)標準標準標準快適指向サススポーツサス
エンジン種類1.3L i-VTEC同左同左1.5L i-VTEC1.5L i-VTEC(高回転型)
燃費(JC08)約20.6km/L約20.6km/L約20.6km/L約19.4km/L約19.2km/L
駆動方式FFFFFFFFFF

📝 グレードごとの特徴まとめ

  • G:必要最低限の装備のみ、価格最重視の人向け。
  • G スマートセレクション:快適装備を厳選した、コスパ最強グレード。
  • L:内外装が少し上質、アルミホイール装備など見た目にもこだわる人向け。
  • X:1.5Lエンジン+上級装備で長距離走行や快適性を求める人向け。
  • RS:専用サス・外観・内装を備えたスポーツモデル。走り重視層に最適。

諸元表

主要諸元
車名ホンダ フィット G スマートセレクション
型式DBA-GE6
発売時期2011年11月
新車価格1,350,000円(税込)
ボディタイプハッチバック
ドア数5枚
乗車定員5名
駆動方式FF(前輪駆動)
トランスミッションCVT(無段変速機)
エンジン型式L13A
エンジン種類水冷直列4気筒SOHC16バルブ
総排気量1,339cc
最高出力99ps(73kW)/6,000rpm
最大トルク12.8kg・m(126N・m)/4,800rpm
使用燃料無鉛レギュラーガソリン
燃料タンク容量42リットル
燃費(JC08モード)20.6km/L
全長×全幅×全高3,900mm × 1,695mm × 1,525mm
室内寸法(長×幅×高)1,825mm × 1,415mm × 1,290mm
ホイールベース2,500mm
トレッド(前/後)1,490mm / 1,475mm
最低地上高150mm
車両重量1,010kg
最小回転半径4.7m
タイヤサイズ(前/後)175/65R14
ブレーキ形式(前/後)ベンチレーテッドディスク / ドラム
サスペンション(前/後)マクファーソン式 / 車軸式

まとめ

1.5リッターエンジンも、マニュアルトランスミッションも、RSも選べる中でのGグレード。

加速性能にもCVTの特性にも、ハンドリングにも気になるところはあった。

しかし新車価格を踏まえると驚愕のコストパフォーマンスだ。

11年+15.8万キロという時間を経てもなお元気よく走る姿は日本車の経済性の象徴である。

私事になるが、ここ数週間が複数回に渡ってドイツ車を泊まりで東京に借りに行っており20万円に迫る経費が生じている。

節約のためにもしばらくは低価格帯のクルマを乗り比べてみようか。

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